産業保健師について「残業が少なく、土日がお休みらしい」ということだけ、なんとなく聞いたことがあるかもしれません。
しかし、産業保健師として働いている人が身近にいるわけではないため、相談する人がいなく、具体的なことはよくわからない、情報収集も進まない・・・という方が多いのではないでしょうか。
実は、産業保健師は働き方も給料も悩みも企業ごとに違います。
本記事では、産業保健師という仕事がどんなものか、企業によって異なる働き方をご紹介します。
なるために必要なこと、職場選びのポイントから採用試験対策までをご紹介します。
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産業保健師とは
保健師の種類は主に3種類
保健師は大きく分けると、働く場所や活動内容により3つに分けることができます。
行政保健師 | 全国の保健所や市区町村の保険センターなど、公の機関で公務員として働く (活動場所:保健所、保健センター、市区町村) |
産業保健師 | 民間の企業で、産業医や衛生管理者とチームを組み社員の健康管理や相談を行う (活動場所:企業) |
学校保健師(養護教諭) | 学校の教職員や生徒の健康管理を行う (活動場所:学校の保健室など) |
産業保健師の役割・仕事内容
産業保健師の役割は、民間の企業において従業員の健康改善・維持・促進のための活動を行い、健康で安全な職場作りをすること。
産業保健の第一の目的は、病気になる前段階の、疾病の発生そのものを予防することです。ひとことで言うと「病気にならないようにすること」です。
<産業保健師の主な仕事内容>
◯健康診断結果のデータ整理・分析 |
◯怪我・病気の治療 |
◯保健指導業務 |
◯過重労働対策 |
◯メンタルヘルスケア対策 |
◯休職者や長時間労働者との面接 |
◯職場視察の同行 |
◯安全衛生委員会への出席 |
企業に求められること
企業が産業保健師に求めることは、従業員の心身の健康管理を行い、結果的に企業の利益に結びつけることです。
産業保健師の導入により、退職者・休職者の数が減少したなどの成果を期待しています。
産業保健師の役割についてはこちらを参考にしてください
産業保健師の役割/企業で働く看護師に求められるミッションとは?
産業保健師のやりがいと苦労
自分で判断し、仕事を進められる
病院での看護業務では医師の指示に従うことが多くても、企業で勤務する看護職の人数は少ないため、ほとんどが自分の判断に任されます。
例えば、必要と感じれば自分で企画して禁煙セミナーを開くことも出来ます。
保健師として、やりたいようにどんどん仕事を進めることができる点でやりがいを感じるようです。
「一人職場」は責任が重く、孤独
産業保健師は、1企業1人体制(一人職場)が多いため一人に課せられる責任は大きく、相談者、理解者がいない場合が多くあります。
さらには、従業員に真剣にアドバイスをしてもあれは違うこれは違うとなかなか聞き入れてくれないという場合もあり、楽なことばかりではありません。
(参考:honnne.biz【職種】保健師が明かす仕事の本音)
産業保健師になるには
保健師資格が必須
看護師資格の所持のみでも、産業看護職に就くことは可能です。
産業看護職とは、企業で働く保健師や看護師のことを指します。
しかし、保健師資格を持った産業保健師の割合は産業看護職全体の約67.2%と半数以上を占めています。
看護師資格の所持のみでは携われない保健師としての業務もあり、実際の求人においても産業看護師の募集は年々減少しているため、企業で働くには保健師資格所持が必須と言えます。
<看護師資格所持で、これから保健師資格を取得する場合>
新卒で産業保健師を目指す人は保健師資格を同時取得
新卒や未経験者よりも産業保健従事経験者や看護師としての臨床経験者の募集が多いため、新卒でいきなり産業保健師になるのは、まれです。
企業としては、即戦力を求めるので、新卒採用を行っていない場合もあります。
しかし、これから産業保健師を目指すのであれば、保健師資格は必要になってくるため、看護師資格のみならず、保健師資格を同時に取得することをお勧めします。
<看護師資格と保健師資格を同時に取得する場合>
新卒で、産業保健師としては就職が決まらないという方もたくさんいますので、一度臨床経験を積んでから、転職活動を行うというケースが多いのです。
ケガの処置を自分の判断で素早く行う力を身につけることは、産業保健師になってからも必須スキルになるので、看護師として臨床経験を積み、再度求人応募に挑むのもひとつの道といえるでしょう。
苦労しないためにはパソコンスキルが必須
産業保健師の仕事にはパソコンスキルが求められる場合が多くあります。
- メール
社内の業務連絡等はすべてメールでのやり取りがほとんどです。 - ワード
企画書や資料作成などの文書作成に必要。文中に図や表を挿入できるレベル。 - エクセル
従業員の健康管理や職場巡視で集めたデータをまとめる際に必要。 - パワーポイント
疾病予防や健康増進活動の企画・運営を行う際の資料作りに必要。
(参考:看護師お悩み相談)
勤務体制と給料
定時上がりで夜勤なし
夜勤がないと手当がつかない分、給料が下がるという点はありますが、生活のリズムが整えやすくなるのが、病院勤務の看護師との大きな違いです。
また、土日休みの企業であれば同じくお休みなので、子育て中の看護師には働きやすい環境なのかもしれません。
就業時間にあわせて退社ができることが多く、企業の福利厚生、各種手当がそのまま受けられるのも魅力です。
平均年収
産業保健師の給料の平均額は、月収で約35万円、年収で500~600万円が相場です。
しかし、あくまでも平均額なので、平均年収は300万~1000万円まで、キャリアや企業によって大きく差があります。
勤める企業によって高収入も期待できる
産業保健師は一般企業への就職ですから、給料や勤務体制、福利厚生などの待遇もその企業の社員と同等になります。
ですから、給料も勤める会社次第ということになります。
現在、産業保健師を導入している企業は大企業がほとんどですが、その中でも、より待遇の良い企業への就職とスキルアップの両方が実現すれば、給料がアップする可能性は十分あり得ます。
産業保健師の給料についてはこちらを参考にしてください
【産業保健師の給料】平均年収300万~1000万の幅。では平均年収は?
求人探しの注意点
求人の見つけ方のポイント
正社員の産業保健師の求人は、ほぼ見つかりません。
理由としては、下記3つがあげられます。
- 産業保健師自体を導入している企業が少ないこと
- 1企業に1人という体制が多いこと(従業員1000人に対して産業保健師1人ということが多くあります)
- 正社員として産業保健師に就いた場合、長く勤める人が多く、空きがでない
産業保健師は定期採用がなく、求人が出るタイミングは決まっていないので、すぐには見つからないかもしれません。
根気強さが必要です。
求人情報をこまめにチェックしましょう。
前任者が辞めるタイミングで慌てて求人を出すというケースが多いので、いざ入社したら引継ぎできる人がいないというパターンもあり得ます。
自分でなんとかしなければならないので、他人任せにはできない責任のある仕事だということの理解が必要です。
求人探しについてはこちらを参考にしてください
産業保健師の希少求人の見つけ方と注意するポイント
職場選びのポイント
企業により、働き方や立場に差があり、やりたい仕事とのギャップが生じる場合があります。
その企業での産業保健師の働き方を面接時などで聞いてみるのも良いでしょう。
患者さんと直接関わり、信頼関係を築きながら生活習慣病やメンタルヘルスの相談に乗ったりなど、こちらから働きかけたり、提案したりして職場環境の改善に携わりたいと思い、面接に行ってきました。
しかしそこは、思っていたのとは違い、社員の診療と検診が主で、社員とのやりとりはなく、外来診療所のような感じでした。
引用:看護師お悩み相談室
産業保健師の採用試験
企業の保健師は会社員
転職の場合、職務経歴書が必要
病院への転職では、求められることが少ないですが、企業への就職活動においては、新卒でない限り、必要になるのが職務経歴書です。
職務経歴書は、どこで何年働いたかだけを書く履歴書とは異なります。
どのくらいの期間、どのような仕事をしてきたのか(会社の中でどんな仕事を任されていたか、前職で得られた経験やスキルなど)を完結にまとめたものです。
職務経歴書に、「今までこんな仕事をしてきたので、次の仕事に活かせる」などをアピールできる書面でもあります。
<職務経歴書サンプル>
(参考:パソナキャリア 職務経歴書の書き方見本&フォーマットテンプレートダウンロード )
面接・採用試験内容
病院の面接・採用試験と企業では、少し異なります。
- 書類選考
- 適性検査(SPIなど)
- 筆記試験
- グループディスカッション
- 面接(複数回の場合もあり)
一般的な企業の採用試験は上記のような選考を経て、内定をもらいます。(企業により選考内容は変わります)
その企業の理念や特徴、企業が求めている人材がどのようなものかを分析する試験対策が必要です。
しかし、産業保健師としての保健指導についての考えなどもしっかりと答えられるように、労働者健康福祉機構で無料で開催している産業保健に関するセミナーへの参加や情報収集をしておくことをおすすめします。
志望動機の注意点
産業保健師は、とても人気の高い職業です。
その理由としては、夜勤がない、土日が休み、医療事故などのリスクが少ないなどがあげられますが、勤務体制の条件のみで志望するのではなく、どう仕事に取り組みたいかを見つけることが大切です。
自分の目的をはっきりと持ち、企業にアピールできる明確な意志が不可欠となります。
- 現在まで携わってきた業務の(年数)経験、そのなかでどう感じていたか
- 前職では何をしてきたのか
- その経験を活かして、新たな場所でどんなことをしていきたいと思っているのか
上記を簡潔にまとめられると良いです。
志望動機・面接についてはこちらを参考にしてください
入職後も好印象が続く看護師の志望動機の書き方・面接対策
まとめ
産業保健師という仕事は、体力的に楽になるというイメージが強いですが、医療従事者以外の従業員や上司などと病院以上に連携が必要となり、組織への理解が求められます。
こちらの仕事に興味を持たれた方は、企業においてどのような仕事をしていきたいか目標を持った上で、産業保健師を目指しましょう。