看護師さんの中には、
「高齢者が好きなので、昔から特別養護老人ホームなどで働きたかった」
「育児があるので、日勤専従で働ける職場を探している」
「急性期病院での激務に疲れてしまい、ゆったりした看護をしたい」
などの様々な理由から、特養で働く看護師に関心を抱くこともあるのではないでしょうか?
今回は、高齢社会のなかで、ニーズも高まる“特養”とは、看護師にとっていったいどんな職場なのか、どんな仕事をするのかなど、詳しくお伝えさせていただきます。
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特養で働く看護師とは?
そもそも“特養”ってどんな職場?
特養とは、特別養護老人ホームの略称です。
身体や精神に障害などがあって、家庭での介護が難しい、要介護1以上で65歳以上の高齢者が入所する施設となっています。
24時間介護体制が整った生活の場であり、末期状態の利用者も多いため、終の棲家としての役割も大きいです。
公的な施設のため低料金で利用できるため、全国での入居待機者も多くなっています。
似たような施設である老健では、入所期間が原則3か月と定まっていて、患者を家庭へ戻すことを目的にしているのに対して、特養では、入居者の一生を見届けるような、長期的関わりとなっていきます。
入所者一人ひとりの特徴に合わせその人らしい人生、快適な毎日を過ごして頂けるよう支えたいといった方は、やりがいのある職場となるでしょう。
特養における看護師の役割と仕事
求められる役割
特養において看護師に求められる役割とはなんでしょう?
特別養護老人ホームにおける看護師の役割は、次の3つのことが主な働きと考えられます。
- 施設利用者の健康管理
- 施設利用者の経過観察
- 嘱託医との連携
まず重要な役割の一つとして、施設利用者の健康管理があげられます。
問診や、血圧測定など、利用者一人ひとりの健康状態を把握することが一番重要な役目になります。
場合によっては、食事や排泄の介助、入浴などもありますが、基本的に専門の介護スタッフが行うケースが多いです(施設によります)。
2つ目の役割としては、施設使用者の経過観察です。
これは健康管理とも関わることですが、“医療者の視点”から、入居者の細やかな変化に気づいたり、対応することが求められます。
高齢者ともなれば、いつ、どのように体調が変化するかは誰にもわかりません。
体調の変化を素早く発見し、病気や怪我の早期発見、早期対応を目的として業務に当たることが求められます。
3つ目の役割としては、嘱託医との連携があげられます。
介護職よりも医療的な知識を生かせるため、看護師のほうが嘱託医との連携がよりスムーズでしょう。
そのため、日々の利用者の状況把握し適切に伝える重要な役割となります。
そのうえで、入居している高齢者の診察、服薬管理を医師とともに行ったり、体調急変時には的確に状況を伝え医師から指示をもらい、迅速に対応することが求められます。
具体的な仕事内容
具体的に特養で看護師に求められる仕事内容とはなんでしょう?
そもそも、特養において適用となるのは“介護保険”のみです。
そのため“医療保険”の適用となる行為は、基本的に病院の受診が必要となります。
そのため、主な仕事内容としては下記などがあげられます。
- 健康管理(バイタル測定、血糖値測定)
- インシュリン注射
- 薬の管理
- 処置全般
- 胃ろうの管理
- 留置バルーンの洗浄・交換
- ストーマの管理
そのほかにも下記などを行うこともあります。
- 介護スタッフが迷ったときの相談対応や医師との連絡業務
- 施設によってオンコール体制がとられている場合には、そちらへの対応
- 施設利用者が病院受診を必要とする場合には、施設外診療の補助
特養で働く仕事内容は“施設によって大きく異なる”ことが多い
施設によって看護師が行う仕事の内容には違いがあり、看護師が看護だけを行う施設もあれば、介護業務を多く行うという施設もあります。
介護業務に追われて看護師としての業務がなかなか満足いくまでできないという葛藤をもつ看護師もいるので、業務の分担については入職前に確認しておいた方がよいでしょう。
特養で働くメリットとデメリット
特養で働く看護師のメリットとデメリットについて考えてみましょう。
まず特養で働くメリットとしては、次のようなことが考えられます。
- 利用者一人ひとりとじっくり向き合える
- 夜勤がなく、残業も少ない
- 職場環境がゆったりとしている
病院とは違い特別養護老人ホームは「利用者の方の生活の場」であり、亡くなられるまでその施設にいる場合がほとんどであるため、利用者と深いかかわりを持つことができます。
2つ目のメリットとしては夜勤がないことです。
時に、オンコール体制をとっている施設も多いので、夜間に突然具合が悪くなったり、転倒などの事故などに対応する場合もありますが、基本的に日勤のみの勤務なので、既婚者の看護師や育児に追われている看護師には大きなメリットとなるでしょう。
3つ目のメリットとして職場環境がゆったりとしている、といったことがあげられます。
医療施設ではなく介護施設なので、病院よりもゆったりとした雰囲気の中働くことができるため、出産や育児などでブランクのある看護師でも働きやすいと思います。
次にデメリットとしては次のようなことが考えられます。
- スキルアップは難しい
- 介護士との業務分担や連携のむずかしさ
- 判断スキルが求められる
1つ目のデメリットとしては、医療行為に触れる機会がへるため、スキルアップは難しいということです。
そのため、病院での勤務に戻ったときにスピード感や忙しさについていけなくなりがちです。
一度、特養の仕事に慣れてしまったら、病院には戻るときには苦労するということはデメリットとして考えられます。
2つ目のデメリットとしては介護職との連携が難しいという点です。
特養だけでなく、介護施設における介護士と看護師の仕事の境界線は非常に曖昧で、看護師が介護業務をしたり、看護師が医療行為をするという実態もあります。
お互いの仕事の範囲や役割が原因でもめることはよくあることで、どんな施設でも多かれ少なかれ介護士との連携には苦労するというのは頭の片隅に入れておいたほうがよいでしょう。
3つ目のデメリットとして考えられるのは、判断スキルが求められるという点です。
医師が常駐していなかったり、オンコールによって介護士から適切な対応判断を求められたりと、看護師として1人で判断を下さなくてはならないことも多々あります。
そのため、責任の重さなどから精神的な負担を感じることもあるかもしれません。
夜勤などの肉体的な負担が少なくとも、判断の責任の重さや、命の終わりと関わることも多いため、精神的な負担がありうるといったことも念頭に置いておくとよいでしょう。
特養で求められる看護師像
これまでをふまえて、特養においてどんな看護師が求められるのでしょうか?
自分が特養ナースとして進んでいくことに向いているかどうか、考えてみましょう。
- 利用者一人ひとりとじっくり向き合いたい
- 自分のライフスタイルに合わせて働きたい
- 介護への興味関心が高い
- 実務経験がある程度ある
メリットやデメリット、自分の目指しているものに照らし合わせて、特養ナースとしての素質を検討してみましょう。
一つ、実務経験に関してですが、これはやはり看護師として判断することが多い職場ですので、これまでの経験をいかすことが求められます。
新卒看護師の方にとっては、そういった面でむずかしいかもしれません。
なかには経験年数の指定がある施設もあるので、チェックしてみましょう。
体験談から探る!特養看護師の実態と悩み
特養看護師経験者の声
特養で働く看護師がどのようなものかがわかってきたところで、実際に働く経験者の声をきいてみましょう。
急性期病棟での忙しさに疲れ果て、特養に転職しました。
引用:看護師お悩み相談室
私ももっとゆったりかかわりたいと思ったからです。
はじめは特養看護職務の時間の流れが本当にゆっくり、長く感じられ、やりがいを持てるのだろうかと不安になりました。
病院は人が足りなくて大変なのにこんなところで無駄にしているのではないかと。
3年目になりますが、その思いは今思うとやるべきことが見えていなかったからだと感じています。
看護師は日中1人2人でやっていますが介護の人とは全く見方が違います。
夜間に引き継ぐ場合は、どうしたら介護の人がわかりやすいかも考えます。
特養の環境で高齢者を観るためには経験の積み重ねが必要だと思うのです。
まずは、入所者の生活を知ること、そしてどのような健康障害がおこりやすいのかを知ることから始めました。
普段の声かけ、反応を観察することがとても重要です。
自分で訴えられない方のニーズを察して自分からかかわっていくのです。
仕事に追われるような病院とは違い、特養ではやるべきことは自分で見つけていかなければいけません。
それがやりがいにつながっていくと思います。
この方の体験談から、“特養看護師ならではのやりがい”があることがうかがえます。
やはり病院というとはまた違う環境だからこそ、学べることや生かせることがあることが、この体験談からわかりますね。
“ゆったりと看護の職に関わりたい”といったこの経験者のかたにとって、ライフスタイルに合う職場であり、やりがいもしっかりと見つけられています。
特養看護師ならではの悩み
特養看護師の方の経験談を探っている中で、やりがいを見つけてイキイキと働いている方もいれば、もちろん職場に対する悩みを抱えている方も多くみられました。
そういった方を参考にしつつ、どういった面が悩みポイントになっていくのか、理解を深めていきましょう。
オンコール体制に関する悩み
特養のオンコールが月に何度かあります。
引用:看護師お悩み相談室
どこもケガしてないのに転倒しただけでコールがあったり、ちょっと微熱があるだけで電話あったり……
ただのヘモ出血だけでもコールありました。
そんなの日勤ナースが来てから報告しても遅くないはず……
こちらの方は“オンコール体制”に関する悩みを挙げています。
基本的に看護師は日勤がほとんどの特養ですが、夜間の利用者の急変対応として、こういった問題が考えられます。
経験者さんのように、介護士にとってわからないことが、看護師には当たり前であったり、介護士にとっての“急変時”の認識との擦れ違いもあるかもしれないですね。
判断も必要になったり、いつ来るかわからないといった点から、精神的な負担にもなりえます。
時にこういった対応も必要であることを理解しておきましょう。
そのうえで自分に勤められるか、また厳しい場合はオンコールがない施設を検討するなど、事前に考えておくといよいでしょう。
医療行為に関する悩み
わたしの働く特養では、点滴、インシュリン皮下注、採血、導尿、Baカテーテルすら
引用:看護師お悩み相談室
やりません。NGチューブで経鼻栄養も禁止らしいです。
日中帯でできる範囲のものはNsがいるんですからやったほうがいいと思いませんか?『特養だから』と言うのは逃げだと思います。
正直、特養にNs.は要らないと感じました。
同じく特養で働くナースです。病院が隣接してる施設です。70代~30代の看護師4名で日勤のみです。
引用:看護師お悩み相談室
STチューブ、Ba挿入、インシュリン、薬の分包や管理、往診や通院の手配、じょくそう管理、職員の健康管理…仕事はけっこうありますよ。介護士さんの技術向上に向けての勉強会準備も始めたところです。
介護と看護の壁や考え、技術の違いがあって、悩むこともあるけど、私は食事や入浴などなるべく利用者さんの近くに居て介助のお手伝いしています。介護も昔ながらの体質があるようで、新しい風入れたくて奮闘中です。
この2人は“医療行為”に関する悩みにつながる体験談です。
1人目の方にとって“もっとできることがあるのに!”といったもどかしさが悩みとなっていますね。
このように施設によって、どの程度看護師として医療行為を行うかが変わってきます。
施設の方針と自分の考えがあっているか、勤める前にできるだけ把握しておくとよいかもしれません。
特養においては、基本的に介護保険が適用となる範囲での医療行為が認められていますが、利用者の状況によっては、「“点滴”をどこまですべきか」といった問題や、「急変時の医療行為はどこまで認められるの」といった問題に直面することもあるようです。
自分の仕事がしっかりと規定されている職場のほうがやりやすい、といった場合は、そういった面を確認するようにしましょう。
介護士との連携に関する悩み
施設の介護士ってなんで医療行為にまで口を出すんですかね?
引用:看護師お悩み相談室
看護師の判断を聞かず勝手な解釈する人多くないですか?
いざ急変し、手に追えないとナースの仕事だから!と逃げるし。
たまに看護師みたいに知ったかぶりする介護士が多過ぎ!
この方は“介護士との連携”に関する悩みを挙げています。
看護師の視点と介護士の視点の違いに悩むこともあるようです。
施設内でどううまく連携をとっていくかが、良い職場環境の鍵となるでしょう。
“看取り”に関する悩み
特養で働いてる看護師です。
引用:看護師お悩み相談室
本人より家族の意向でターミナルの方針が決まってます。連携病院の、緩和ケア病棟に移るかとか施設では点滴とか、医療的なことをどこまでやるか聞いて看取ります。
だいたいの家族は無理には延命させないでくださいと今まで面会に来なかった家族が来たりしてすぐ帰るとかのパターン。
熱意ある家族も職員もいません。ステルベンは施設の配属医が聴診器あててすぐ帰ります。
配属医は自分のクリニックは大事みたいで、「このあと職員の面接あるから帰るから」と感情もなんもないです。
「もうすぐ逝くかな」位に平気で話す介護・看護職員。ターミナルは大事にされてません。
施設より病院や自宅のほうがいいんじゃないかと思います。
最後まできちんと向き合えるひとがいたらいいんですが。無力です。
この方は“看取り”に関する悩みをあげています。
ゆったりとした職場環境ではあるものの、命の尊厳問題にかかわることも多いため、精神的な悩みにつながることもあることを理解しておきましょう。
気になる特養看護師の給与事情
特別養護老人ホームで働く際、気になるのは給料、時給かと思います。
看護師として人の役に立ちたい、現場で働きたい、という気持ちも当然ありますが、働く以上は給料、時給といった部分もとても大切です。
こちらは、実際に特養で働いている方の給与例です。
ぴちょんくんさん [ 女性 / 25歳 / 経験3年目 / 正看護師 / 特別養護老人ホーム ]
働き方 | 常勤(夜勤なし) |
総支給額 | 4,092,276円 |
月給 | 256,023円 |
(参考:看護roo!ナースな私のお給料)
基本的に、特養看護師は夜勤無しでの勤務となりますから、平均して考えると、夜勤あり病院勤務の看護師の給料よりは低くなります。
介護施設の規模、入所者数によって違いが出てきますが、月の給料、時給の相場としては、
【正看護師 正職員】平均で月給25~30万円ほど
【正看護師 非常勤(パート勤務)】平均時給が1,800円ほど
多少給料は安くなっても、家庭と仕事を両立しやすいということで育児中の看護師さん、家庭での時間もしっかり確保したい看護師さんからは選ばれる職場となっています。
ほかの人の給与と比較したいという方は、こちらのサイトにおいて介護系で働く看護師さんの、給与明細を見ることができますので、ぜひ参考にしてみてください!
特養看護師を目指すなら
特養の実態を理解する
ここまで読み進めてくる上で、特養看護師としての興味が高まったという方は、さらに特養について事前リサーチを進めていきましょう。
今回読み進めるうえで出てきた疑問点や不安点に関して、体験談などを参考にリサーチしてみるといいかもしれません。
どれほど施設によってやることが違うのか、自分の目指す職場として合っているか、ゆっくり考えて見ましょう。
自分に合った職場を探す
ここまで述べてきたように、特養における看護師の仕事は、職場によって違いが生まれてきます。
ある程度医療的に利用者と関わりたいのか、介護の仕事にも関わっていきたいのか、そういった点を考えつつ、自分の理想とする職場を検討しましょう。
興味をお持ちになった求人の職場に関しては、転職支援を行う人材紹介会社の担当コンサルタントを介して、看護師の役割・仕事内容を詳しく教えてもらう事も有効な一つの方法です。
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まとめ
いかがだったでしょうか?
特養で働くとはどういうことなのか、少しでも理解が深まっていたら幸いです。
あなたにとってぴったりの職場か検討し、新たな一歩につながることを願っています。