みなさんの中には、小児科の看護師になりたい方も多くいらっしゃるのではないでしょうか。
小児科の看護師は、何よりも「子どもが大好き」という理由から、たくさんの新卒看護師さんに第一志望として選ばれる人気の診療科の一つです。
また最近は「小児専門看護師」の能力をさらに拡大すべく、政策にも力が入り、ますます脚光を浴びつつあります。
しかし、実際には求人自体が少ないこと、人気なだけに競争率も高いこと、そして少子高齢化による子どもの減少などから、求人を探すことが難しくなっています。
また、経験者を好む特徴もあり、転職するにはなかなかハードルが高いのが現実です。
今回は、小児科看護師の役割や向き不向き、小児科の就活事情についてわかりやすくお伝えしたいと思います。
ぜひ、みなさんの小児科看護師の就職活動に、参考にしていただきたいと思います。
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小児科の看護師-その役割と仕事内容
小児科が設けられている理由
小児科は、新生児から思春期(おおむね15歳)までの人を対象とした診療科です。
子どもといえども、身体の仕組みは大人と一緒なはず。小児科は次のような役割を担っています。
- 子どもの成長と発達をチェックする
- 免疫力の弱い子どもの様々な感染症を治療する
- 子育てに奮闘する親御さんをサポートする
小児科の詳しい内容については、ぜひ次のサイトを参考にしてみてくださいね。
(参考:ウィキペディア・小児科学/勝又小児科 アレルギー科医院、医院のご紹介|小児科の役割)
小児科看護師の役割-「子ども」の患者さんを相手にするということ
それでは、小児科の中で特に「看護師」のみなさんが担っている役割にはどんなものがあるでしょうか。
2013年に岐阜県立看護大学では、小児医療現場の実習を行った看護大生らを対象にグループワークを実施し、「小児看護の役割をどのように捉えるべきか」について研究を行いました。
その内容をここに紹介します。
「子どもの味方」としての小児科看護師
①自分の気持ちを伝えられない子どもの気持ちを理解する
子どもはその幼さや周りの状況ゆえに、自分の気持ちや状態を上手く表現できないことがあります。
子どもの裏の気持ちまで視野に入れてかかわっていく事で、本当のニーズや不安・悩みを分かってあげることは、小児科看護師のとても重要な役目です。
②子どもの「将来の成長・発達」を踏まえてケアやサポートを行う
入院や長期間通院をしている子どもは、それによって普段の生活が中断されています。
退院した後、治療が終わった後、この子がどのように日常に復帰していくか、その先はどのように暮らしていくかを考えながら、子どもに関わる必要があります。
③子供が自己決定や自己管理する力を獲得できるようにする
特に重い病気の子どもの場合、将来的には子ども自身が自分の病気や障害を理解して受け入れ、自分で対応していく必要が出てきます。
子どもの状態や成長の段階に応じて、知識やケアの方法などを伝えていく働きが必要になってくるでしょう。
親御さんへの対応及びサポート
①ご家族の言動の裏にある思いを理解する
親御さんやご家族の言葉をそのまま鵜呑みにせずに、裏で抱えている不安や悩み、本当のニーズを読み取ることが、サポートへの第一歩かもしれません。
②ご家族が子どもの健康問題を受け入れられるようにする
子どもへのケアを正しく行うためには、何よりもご家族、特に親御さんが現状をしっかり理解し受け入れる必要があります。
主な説明は医師がすると思いますが、それを分かりやすく理解できるようサポートしていくのが小児科看護師の役割です。
③親御さんやご家族のみなさんが、子どもに必要なケアができるようにする
子どもにとってご家族、特に親の存在はとっても大きいです。
病院での治療だけでなく、家庭内でのケアも大事。
なので、親御さんが適切なケアを行えるように、技術や知識を伝えることが重要になってきます。
(参考:小児科看護師実習後に看護学生が捉えた小児看護の役割 谷口 惠美子 他、岐阜県立看護大学紀要、第13巻1号、2013年)
服装や振る舞い、職場環境への配慮
他の科の看護師さんとちがって、小児科では普段の看護師のほかに、かわいい漫画やアニメなどのキャラクターが入ったエプロンやグッズなどを着ることが良くあります。
用意の仕方などは病院によって様々ですが、小児科の看護師さんのための通販サイトがあったりするので、良かったらぜひ覗いてみてくださいね。
本当は可愛いキャラクターが大好きなのに、真面目な職場では表に出せなくて残念、という方には良いお知らせかもしれません。
小児科看護師の仕事内容
小児科看護師の一日の流れ
小児科の看護師さんはどんな一日を過ごすのでしょうか。
ここでは、京都府立医科大学附属病院に勤務する土田翔太さんの一日のタイムテーブルを紹介します。
〇小児科に勤務する土田さんの一日のタイムテーブル
8:00 | 朝のミーティング | |
10:00 | 点滴準備 | |
11:00 | カート運搬 | |
12:30 | 昼食 | |
15:30 | 救急カートチェック | |
17:30 | 申し送り |
小児科看護師が行う一般的な医療行為
「子どもが病気になったら、まずは小児科に」というように、子どもの病気はまず小児科で対応します。
おおむね次のようなものがありますね。
【小児科の看護師が行う一般的な医療行為の例】
- 診察の介助
- 採血、点滴(クリニックの場合は、医師が行う場合が多々ある)
- 溶レン菌やインフルエンザなどの検査
- レントゲンの準備
- 予防接種、またはその介助
- 乳児の健診計測など
(参考:看護師お悩み相談室)
その他、看護師に一般的に求められる医療行為に関する詳しい資料がありますので、ぜひ覗いてみてくださいね。
(参考:厚労省、特定行為について(基本的な考え方)のイメージ)
幅広い領域に対応する小児科看護師の仕事
小児科で扱う専門領域は病院によって多少の差がありますが、次のようなものになります。
●循環器 ●代謝 ●内分泌
●栄養 ●アレルギー ●免疫
●血液 ●悪性腫瘍 ●腎
●神経 ●発達神経
これらの診療内容を子どもに対して行うときは、どうしても大人に対して行う時と状況が違ってきます。
体が小さかったり、血管が分かりづらかったり、体を揺らしたり、泣いたり、暴れたりといろんな大変な側面があります。
なので、小児科で働く看護師のみなさんには、医療行為のテクニックとともに経験が大事になってくるんです。
また、生まれたばかりの新生児や、生まれた際の体重が異常に軽かった低出生体重児などに対応する「新生児集中治療室(NICU)」が設けられている病院もあります。
町のクリニック医院でも扱う領域は基本的に同じです。
症状が重かったり、集中的な治療が必要になったりの場合は、総合病院へ紹介するといった形になるでしょう。
また、地域のお母さんたちに寄り添って支える、子育てカウンセラーとしての役割を担っている部分もありますね。
看護師のみなさんには、医療に関する知識・能力だけでなく、子育てや育児に関する知識も、ある程度求められるんです。
(参考:帝京大学医学部付属病院 小児科・小児アレルギーセンター/いわつき小児科クリニック クリニック案内)
「インフォームド・アセント」から始まる、子ども(患者)さん・親御さんとの関係づくり
子どもの治療にあたる時、医療行為と同じくらい大事なものに「インフォームド・アセント」というものがあります。
これは次のような意味を持った言葉です。
これから行う(医療)行為について、医療従事者(医師・看護師さんなど)が子どもに理解できるように分かりやすく説明し、その内容について子どもに納得してもらうこと。
子どもを治療する時は、どうしても親御さんとの話し合いや合意も必須になってきますが、これが一歩間違うと医療スタッフと親御さんとの話し合いだけで治療を進めちゃうことになりかねません。
しかし、あくまでも治療を受ける本人は子どもなので、子どもの理解能力に応じて十分に内容を説明し、納得・同意してもらう必要があります。
インフォームド・アセントの実践には、次の4つのポイントが挙げられます。
- 子どもたちが自分の症状について発達段階に適した理解が得られるよう支援する
- なされる検査や処置の内容とその結果について子どもに説明する
- 子どもの状況理解や反応に影響を与える要素について臨床的に査定する
- 提案されたケアについて自発的に子どもが納得しているか否かを表現できるよう工夫する
子どもの目線に合わせて治療の内容を説明し、納得と理解を得て、信頼関係を築く。小児科看護師のみなさんが担う大事な仕事の一つです。
(参考:公益社団法人 日本看護協会コラム「インフォームド・アセントとは」)
小児科や小児科看護師について良く分かる本のおすすめ
小児看護についてはたくさんのテキストが出ていますが、もっとも代表的で良く読まれているのがこちらです。
<発達段階からみた小児看護過程+病態関係図、石黒彩子、医学書院>
この本は、患者である子どもの発達段階別(乳児期、幼児期、学童期、思春期)に分けて、それぞれの段階ごとに特徴と必要な看護過程を様々な側面から見つめてまとめたのが特徴です。
実際の実習現場で学生さんが出くわす可能性が高い疾患を例に上げている他、子どもに特徴的な症状についても症状別の看護過程を載せています。
これから小児科について詳しく知りたい!と思っている方に、ぜひおすすめしたい一冊です。
この本に関してはこんなコメントが寄せられています。
さすが医学書院。このようなものを欲しいと思っていました。詳しく掲載してあるので,やや難解なところはあります。学生向けというよりは,指導者向けでしょうか。大変役に立っています。カラーが多く,見やすいです。持ち歩くにはコンパクトですが,内容が濃い分重いです。分野毎に切り離して使用しています。
引用:楽天ブックス(匿名)
小児看護学実習の強い味方になるでしょう。これ一冊あれば記録もバッチリ書けます。
引用:楽天ブックス(fukuroukunさん)
(参考:医学書院ホームページ)
小児科看護師になりたいあなたへ-向いている人・向いていない人
よく「子ども好きなので、小児科で働きたい」という声を聞きますが、実際どんなタイプの人が向いているのでしょうか。
ここでは、より小児科看護師に向いていそうな性格や考え方について紹介したいと思います。
「子どもが好き」-必要な条件だけど、これだけでは十分ではない
小児科で働くために、「子どもが好き」というのは、ある意味当然なことかもしれませんが、小児科を訪れる子どもがみんな可愛いとは限りません。
むしろ辛い病気を抱えて助けを求めてくるわけですから、相手するのに人一倍手間がかかります。
また、必要に応じて採血をしたり点滴を打ったりなど、小さい子どもの身体に向かって各種手当を行うので、優しい心だけだとむしろ「むごい」なんて思ってしまう場面が続くかもしれません。
そして、困惑している親御さんにも対応しなければならないでしょう。
なので、単純に子どもが好き、というよりも「何としてもこの子を助けてあげたい」という、一人の医療者としての高い意識と強い心が必要なのかもしれません。
こんな人なら向いているかも! 世話好き、見まね上手、切替え早い人! 経験者ならなお可
経験者が好まれる傾向にある小児科
小児科では、経験者の看護師さんが好まれる傾向が他の科より強くあります。
それは、前章でも説明したように、小児科は他の科より医療行為が難しく、患者の子どもや親御さんへの対応が大変という特徴があるからです。
世話好きな人
子どもの患者さんは、大人の患者さんよりも手間がかかるし、よりたくさん気を遣わなければならないと思います。
元から世話を焼くのが大好きな方なら、小児科には向いているかも!、ですね。特に子どもは自分の気分や状態をきちんと言葉に表せないことが多いので、余計な気遣いでこちらから気づいてあげることが必要かもしれません。
見まねが上手い人
小児科看護師になってもっとも大変なことの一つが、採血から始まる医療行為の難しさだとよく言われます。
大人より身体が小さく、血管などが見つけにくいため、最初の内は何度も失敗するケースが多いようですね。
ネットには様々なコツが紹介されたりもしますが、結局は上手い先輩の技を隣で見習いつつ自ら成長していくのがベストと思います。
上手な人のコツを捉えるのが得意な人は小児科に向いているかもしれません。
切り替えが早い人
泣きわめいたり暴れたりする子どもや、理不尽な文句を言ってくる親御さんにいちいちイライラしていたら、小児科の仕事は務まらないかもしれません。
また時には「なんでこの小さな子がこんな辛い目に」という場面に立ち会うこともあるでしょう。
様々な状況に引きずられることなく次へと切り替えていくことができる方が、小児科に限らず看護師の仕事に向いていると思います。
寛容な心・忍耐深い心の持ち主
最も重要な資質の一つと言っても過言でもないでしょう。
泣きわめいて暴れる子どもやピリピリしている親御さんに最善を尽くして対応するために、常に求められる課題かもしれません。
基本的な医療行為の腕前に自信のある人
小児看護では採血や点滴など基本的な医療行為が大人の患者さんより難しいです。
なので、もし小児看護の経験がない上に医療行為にも苦手意識が強いのであれば、小児科看護師は今一度考え直す必要があるかもしれません。
円滑な仕事のためにぜひほしい能力の一つです。
こういう方はちょっと…優しすぎる人、コミュニケーションが苦手な人
優しすぎる人
優しいこと自体はとても良いこと、素晴らしいことだと思います。
しかしあまりにも優しすぎる性格だと、子ども一人ひとりの状況に振り回されたり、深く感情が入ってしまったりして、かえって働きにくいかもしれません。
ケアのために子どもをきちんと落ち着かせられたり、時には親御さんですら辛い場面でもスタッフとして立ち振る舞ったりと、強くたくましい心がほしいです。
コミュニケーションが苦手な人
1章の(2)エ.でも説明したように、子どもの病気や怪我について、親御さんはもちろん子ども本人にも分かりやすく伝えていかなければなりません。
なので、大人・子ども両方に対するコミュニケーション能力が求められることが多いです。
コミュニケーションに強い苦手意識を持つ方なら、小児科で働くために苦手意識の克服にも取り組む必要があるかもしれません。
どんな人が働いている? 先輩看護師の体験談
先輩たちが話す、小児科で働くメリット
- 小さなことにも気づく力が身につく
訴えることができない子供も多いので、いかにアセスメントして、その子の小さな訴え、反応に気づいてあげられるかなど、小さいことに気付くチカラがつくような気がします。
引用:看護師お悩み相談室(M★さん・小児科専門病院勤務)
- 子どもやその親御さんにしっかり向き合っていける
自分が頑張れば家族や・患児が評価してくれるように感じます。自分の看護観にあっていたと言うのも大きかったとは思いますが、患児や家族にしっかり向き合っていける気がします。
引用:看護師お悩み相談室(そらさん・小児科NICU勤務)
これほど家族を大事にしようとする分野は少ないので、家族を含めた看護とはどういうものか、という看護の原点に立ち返ることが出来るかと思います。
引用:看護師お悩み相談室(匿名さん・NICU勤務)
- 子どもの笑顔に癒される!
何よりも、退院する時、成人とは違った喜びがあります。子供達の笑顔にすごく癒されます。
引用:看護師お悩み相談室(そらさん・NICU勤務)
先輩たちが話す、小児科の辛いこと
- 点滴・採血が難しい
血管に入った!と思っても、必要量が採れず、刺し直しになることがとても多くて、患者さんにも申し訳ないし、落ち込んでしまいます。
引用:看護師お悩み相談室(匿名希望さん・小児科外来勤務)
- 予防接種の件数が多くて大変
予防接種がとにかく大変です。ワクチンの種類も増えるいっぽうで、接種期間もそれぞれ違うので、覚えることばかりです。…2時間くらいの間に何種類もの注射を80人くらいが受けに来ます。
引用:看護師お悩み相談室(匿名さん・小児科クリニック勤務)
- 暴れる子どもを押さえなければならない
介助は、とにかく全力で暴れますので、ひたすら押さえるって感じです。体の大きなお子さんでも、大暴れしたりします。
引用:看護師お悩み相談室(匿名さん・小児科クリニック勤務)
- 親御さんとのかかわりが大変
そして何といっても親とのかかわりが大変。…親との関わりに嫌気がさして、異動しました。
引用:看護師お悩み相談室(ばじさん・5年間小児科病棟勤務後に異動)
- 他の病院や診療科への転職が難しい
…小児科しか経験がないため、正直成人に関することは新人並です。…できないことは、これから努力するしかないと、わかってはいるのですが、些細なことで、指摘をうけました。
引用:看護師お悩み相談室(はっちんさん・小児科6年勤務後に療養型病院へ転職)
現役看護師さんの紹介
ここに、現役として活躍されている小児科看護師の方々のコメントを紹介します。それぞれご所属の病院のホームページに紹介されている、先輩看護師のみなさんです。
『小児科は看護師として大きく成長できる場』坂井田敦美さん
(聖霊病院 小児科 2014年入職)
…生まれて間もなく入院しなければならなかった新生児や乳児、そしてその患児に付き添われているご家族、また、手術を受ける患者様や緩和ケア(痛みのコントロール)目的で入院される患者様などひとつの病棟で色々な状況下の患者様を看護させていただくことができ、看護師として大きく成長できる場だと思います。
引用:聖霊病院の紹介ページ
『退院した元気な子ども達の姿を見るのが何よりのやりがい』小原由加さん
(埼玉県立病院 小児医療センター幼児学童第2病棟 2009年入職)
経験不足のせいか、もっともっとお子さん達とコミュニケーションを取りたいのにできないこともあり、日々仕事の難しさを感じています。でもその反面、お子さんやそのご家族が嬉しそうに話しかけてくれたり、退院した子が元気な姿を見せに来てくれたりすると、すごくやりがいを感じます。入院初日の子に対して、励ましの言葉をかけたことがあるのですが、後になって「あの言葉に勇気をもらえた」と言われたことは、強く印象に残っています。
引用:埼玉県立病院の紹介ページ
『頑張っている子どもたちに笑顔をプレゼントしたい』遠藤寛子さん
(愛知医科大学病院 小児病棟 2007年入職)
ある時、全身の95%に火傷をおった6歳の患者さんが緊急入院しました。大学では「20%の火傷で生死が危うい」と学びましたが、その子は1年間の治療に耐え無事退院。生命力の強さに驚いた私は、頑張っているこの子たちの力になりたいという思いをますます強めました。
引用:愛知医科大学病院の紹介ページ
小児科看護師の現状
看護師の配属希望 No.1と言われるほど人気がある小児科。
果たしてその実情はどうでしょうか。
ここでは、小児科で働く看護師のみなさんの就職の状況や、就活に役立つ情報をご紹介したいと思います。
平均年齢は30.7歳、勤続年数は4.2年、入れ替わりが多い小児科看護師
複数の機関が行った調査の結果を見ると、小児科に働く看護師さんは26歳~30歳の方が一番多いことが分かります。
福岡県立大学が小児科の看護師さん123名を対象に行った調査では、平均年齢が約30.7歳、小児科での勤続年数はおおよそ4.2年程度でした。
(参考:短期入院が多い小児病棟に勤務する看護師の専門職としての自律性、倉田節子、ヒューマンケア研究学会誌第4巻2号 2013
小児領域で働く看護師の学習行動とワークコミットメントと関係、中村恵美、福岡県立大学看護学研究紀要5(2)、80-88、2008
平成26年賃金構造基本統計調査(厚労省))
これは日本の看護師さん全体の平均年齢や勤続年数より低い水準です。
なので小児科は、他の科に比べて看護師の入れ替わりが多いと予想することができますね。
勤務時間は勤務先によって様々、クリニックは残業が多い傾向
小児科の勤務時間は勤務先や雇用形態によって働く時間帯が様々なのが特徴です。
次に勤務先ごとに特徴を紹介しますね。
- 総合病院の場合
外来のみであれば、残業は少ない傾向にあります。
病棟の場合は、実際の人員の事情やシステム(2・3交代制)次第で残業や夜勤が入ってくると思います。
看護師という仕事自体が普通残業や夜勤が多いものですが、小児科病棟もその点はあまり変わりないかもしれません。
- NICU(新生児特定集中治療室)・PICU(小児集中治療室)などの場合
こちらはICU(集中治療室)の類であり、72時間体制で運営が行われていますので、他のICUと同様にシフト体制(交代制)で運営されるのが普通です。
また、72時間の夜勤制限ルールの適用外でもあります。
※72時間の夜勤制限ルール
「72時間ルール」とは、「看護職員の月平均夜勤時間を72時間以内」にするという入院基本料の要件の1つです。
2006年度の診療報酬改定で、患者1人に対して看護師7人を配置する「7対1」の看護体制を新設するのに伴って設けられました。
病院は「72時間ルール」を守らないと、厳しい罰則を受けることになります。
詳しくは以下のページを覗いてみていくださいね。
(参考:看護roo!「夜勤は72時間までルール」が変わるかも?病院と看護協会の攻防はじまる)
- クリニックの場合
小児科のクリニックの場合、ほかの科のクリニックよりお昼休みが長く、その分夜遅く終わることが多いです。
例えば、外来受付や診療時間が次のようになっています。
- 静岡県K小児科クリニックの場合(診療時間) → 09:30~12:30、15:30~18:30
- 埼玉県I小児科クリニックの場合(診療時間) → 09:00~12:30、14:30~18:00
これは、子どもが夕方に急に熱を出したり、仕事帰りの親御さんが子どもを連れてきたりするため、夕方5時あたりから込みだすことが多くあることへの配慮です。
対応するスタッフの数に限りがあるため、自然と残業が多くなる傾向にあります。
一般的な給料の水準と各種手当は平均並み、小児専門看護師の資格は+月5,000円
小児科の看護師さんがもらえる手当は、「家族手当」、「通勤手当」、「時間外勤務給」など、一般的に看護師さんがもらえる手当のみです。
給与明細や手当について、日本看護協会が詳しくガイドラインを示してあるので、ぜひ参考にしてみてください。
(参考:日本看護協会 5分でわかる給与明細)
手当に他の科との差がない分、もらう給料もあまり変わりありません。
勤続年数や病院の事情、地域、実際の残業・夜勤回数によって差がでるだけでしょう。
転職サイトの看護roo!の「ナースなワタシのお給料」ページが集計する統計では、全体の看護師のうち、常勤(夜勤あり)が平均480万円/年、日勤のみが平均415万円/年となっています。
小児科看護師のお給料の事情もここから大きくは変わらないです。
(参考:ナースなワタシのお給料)
小児専門看護師の資格を持っている場合は、「専門看護手当」が付きます。国立病院機構が示す資料では、「専門看護手当」として5,000円/月が給料に加算されます。
(参考: 国立病院機構 看護師・助産師)
小児科看護師の求人
ここでは、小児科看護師の求人探しについて、もう少し込み入ったお話しをしたいと思います。
みなさんの求人探しのお役に立てればと思いますので、ぜひ参考にしてみてください。
小児科看護師の求人の現状
小児科看護師の求人は全体の約2割
看護師転職サイトの「ナースではたらこ」が提供する求人情報によると、平成28年3月現在公開されている正看護師の求人3200件のうち、小児科の求人は654件、小児歯科・外科は合わせて87件でした。
全体求人の約23%が小児科とその関連の求人、ということになりますね。
ひとまず、求人の数が多く、転職にチャレンジできるチャンスはいっぱいあることが分かります。
倍率の高い小児科看護師
求人の数が多い小児科!
しかし転職しやすいか?、というと、そうとも言えないようですね。
転職サイト「看護roo!」が新卒看護師さん1,558名を対象に行った調査で、第一志望が小児科だったのは128名と全体5位だったのに対し、実際に小児科に就いたのはわずか75名だったことが分かりました。
1.7倍のなかなか厳しい倍率…。
うわさ通り、大人気な小児科看護師です。
少子高齢化の影響により、小児科の需要自体が減少の傾向
言うまでもなく、今は少子高齢化の時代です。
子どもの数そのものが少なくなっているので、子どもの患者さんや小児医療のニーズも少なくなってきているんです。
内閣府が毎年発表する「子ども・若者白書」の平成27年度(2015年度)版によると、日本の30歳未満の人口は1975年以来一貫して減少していることが分かります。
10万人当たりの受診者の数はほぼ変わっていないですが、母数が減っている分、全体の受信者は年々減ってきていることが分かりますね。
求人の探し方
まずは、求人検索エンジンやハローワークを活用
①求人検索エンジン
求人検索エンジンは、インターネット上の求人情報を一括に検索してチェックできる便利なサービスです。
代表的な求人検索エンジンには、こんなものがあります。
【メリット】
- 一度の検索で大量の求人を見つけることができる
【デメリット】
- 見つけた求人情報に対して、一々自分で直接問い合わせをする必要がある
- 応募先の病院の情報が少ない
②ハローワーク
ハローワークは、地域の一般的な求人を網羅しているもっとも基本となる相談窓口です。
【メリット】
- 地元の看護師求人情報をたくさん扱っている
【デメリット】
- 求人応募の受付がハローワーク窓口のみでしか、行えない
- 応募先の病院の情報が少ない
- 経営状態や労働環境が良くない病院の求人もある
求人検索やハローワークのより詳しい活用法については、以下の記事を参考にしてみてくださいね。
詳しくはこちら
⇒ 求人検索エンジン ネット上の准看護師求人を一括で探す
上手く求人が見つけられないときは-転職の味方、看護師転職サイト
もしも自分にぴったりな求人が上手く見つからない、または忙しくてなかなか求人を探せない時は、看護師転職サイトの力を借りるのも良い方法です。
参考までに下記は主な転職サイトの小児科の求人数ランキングになります。(2025年1月時点)
順位 | 転職サイト名 | 求人数 |
---|---|---|
1位 | 看護のお仕事 | 8,919件 |
2位 | 医療ワーカー | 5,057件 |
3位 | マイナビ看護師 | 3,431件 |
4位 | MCナースネット | 557件 |
転職を考える看護師のためのこれらのサービスは非常に活発に行われていますが、それぞれメリットとデメリットがありますので、利用するときは良く考える必要があります。
【メリット】
- 求人探しから入職後の手続きまでをフォローしてもらえる
- 病院の内部情報を知ることができる
- 非公開求人を紹介してもらえる
【デメリット】
- キャリアコンサルトとの相性がある
- 転職サイトごとに得意な地域に差がある
その他、看護師転職サイトを利用しようとするみなさんに、ぜひ確認してほしいことが良くまとまっている記事がありますので、もし良ければぜひこちらも覗いてみてくださいね。
求人検索のコツ
- 就職活動の動機がしっかりまとまれば、どこに行きたいかを決めやすい
これは小児科に限らない話かもしれませんが、転職する動機を極めることはとても重要な作業です。
自分の中に就活の基準を作れば、それに合わせて求人をどんどん絞ることができるからです。
もっとも理想的なのは、自分が行きたい病院を自ら具体的に決めて直接選考を受けることだと思います。
- 患者さんの口コミサイトを利用する
ネット上には、育児ママたちが安心して利用できる小児科病院を探すための口コミサイトがあります。
気になる求人を見つけた場合、その病院の患者側からの評価を探ることもできるでしょう。
もしも多くの患者さんから悪い評価ばかり受けてる病院なら、あまり職場としても良くないのかもしれません。
逆に好評を得ている病院をピックアップすることもできます。
ぜひ活用してみてください。
(参考:最強のママ友をもうひとりーWOMEN’sPARK/hosupi 病院・医院のクチコミサイト)
卒業してすぐに小児科で働きたい-小児科看護師になりやすい学科や学校はある?
看護師は、原則として看護にかかわる内容を全般的に習得することになっています。
なので、看護学校や大学の看護学科に入学し卒業するまでは、分科されません。
看護師の国家試験に合格し、免許を習得してようやく、自分が働きたい病院や科を選択することができるのです。
まずは看護師としての知識と技術をしっかりマスターすることが、良い看護師になることや希望する診療科に就くことにつながることかもしれません。
(参考:厚生労働省 看護師国家試験の施行)
小児科に対するイメージと、小児科で働きたい動機をしっかり持つこと
転職に成功するためには、「自分はなぜ小児科看護師になるべきか」をしっかり考える必要があります。
小児科看護師は競争が激しく、生涯を小児科看護師として生きるという高い意識を持った先輩方がたくさんいらっしゃいます。
なので、「今のところより働く条件が良いところ」を探すのがメインの方には、あまりおすすめできないかもしれません。
自分がなぜ小児科看護師になるべきか、なぜ他ではなく小児看護か、それをまずしっかり答えられるようにしてほしいと思います。
次のポイントを自分に問いかけて、ぜひ一度、深く考えてみてくださいね。
- どうして小児科看護師になろうと思ったか?(転職を考えた動機)
- 小児科看護師になって、自分はどんな看護がしたいか?(希望する仕事のイメージ)
- 小児科看護師として働き、自分はどのようになりたいか?(自分自身の成長目標)
- 小児科看護師として、患者さんである子どもやその親御さんをどのように支えていきたいか?(仕事への抱負)
おわりに
小児科看護師について、その役割と向き不向き、就活、求人探しの4つのポイントに絞って、説明しました。
子どもの数が減っていく今日の状況においても、小児科看護師の存在は変わりなく重要な存在です。
さらに、医師の数も足りなくなってきている今では、プロの小児科看護師の活躍が脚光を浴びつつあります。
小児科看護師になろうとしているみなさんに少しでもお役に立てることができれば、うれしい限りです。
自分の将来のキャリアになんとなく不安な看護師さんへ
キャリアアップや働き方の見直しを考えつつ、どこから始めればいいのか迷うこと、ありますよね。
そんな方には、看護師転職サイトレバウェル看護を利用するという選択肢があります。
専任のキャリアアドバイザーが、理想の職場探しをサポートし、面接対策や条件交渉といった手厚いフォローを提供してくれるので、初めての転職にも安心です。一人で悩む前に、利用してみるのもいいかもしれません。