『看護師を辞めたい』

誰でも一度は思ったことがあるのではないでしょうか。

  • 自分は本当に看護師に向いているんだろうか
  • もっと自分を認めてくれる病院はないのか
  • 悩みを誰かに相談したい

など、自分では答えを出せずにいる人も多いのではないでしょうか。

この記事では、離職のリアルな実態や辞めたいと思った時の対処法、 理想と現実のギャップに向き合う考え方を解説しながら、看護師を辞めたいと思った人が現状をどのように乗り越えればよいかについて説明していきます。

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「看護師辞めたい」のリアルな実態

やりがいは「ある」が70%!なのに辞めたい?

仕事に対するやりがいでは、女性の一般職のやりがいは53%であるのに対し、看護師は70%ととても高い割合になっています。

やりがいを感じる点
  • 日々の看護の中で、患者さんの笑顔を見たり感謝の言葉をかけてもらったりすることが心の支えになる
  • 患者さんが元気になっていく姿を見ることは看護師にとって一番の喜び
  • 多くの人と関わりさまざまな場面に立ち会うことができる
  • 家族愛に触れたり、人生観について学び考えたりと、自分自身も成長し続けることができる

いっぽうで、辞めたいという気持ちになってしまう理由については次のようなものが挙げられています。

辞めたいと思わせる点
  • 体力的にも精神的にもとても大変
  • 自分の行う看護が人の命に関わることもある
  • 常に大きな緊張やプレッシャーにさらされ、辛さや苦しみを感じることが多い
こちらの記事では看護師のやりがいについて詳しく解説しています。

「看護師の仕事は好きだけど、もう辞めたい」という声も珍しいことではありません。

仕事への魅力ややりがい以上に、辛さや苦しみが上回ってしまっている厳しい現実があります。

「辞めたい」と思っているのは4人中3人

4人中3人が看護師を辞めたいと思っている
(参考:日本医療労働組合連合会『看護職員の労働実態調査「報告書」』

4人に3人が「辞めたい」と思っていることが明らかになりました。

「仕事を辞めたいと思うことがありますか」という質問に対し、「いつも思う」「ときどき思う」を合わせると75.2%という結果になりました。

看護師が「仕事を辞めたい」と思うことはとても自然なことなのかもしれません。

あなただけが特別なわけではありません。

1番の理由は「人手不足」

仕事を辞めたいと思う理由は、「人手不足で仕事がきつい」が約4割ともっとも多く、続いて「賃金が安い」「夜勤がつらい」「思うように休暇が取れない」となり、いずれも3割を超えています。

人手不足によって現場で働く看護師の労働条件がより厳しくなり、時間外労働や夜勤が増え、逆に休憩時間や休暇日数が減ってしまっているというのが現状です。

現場看護師の叫び

辞めたい気持ちにさせる

人手不足は、ただ単に看護師が不足しているという人員的な問題だけではなく、現場で働く看護師に深刻な影響を与えています。

人手不足⇒労働時間や業務量の増加⇒ストレスや悩みを抱える⇒仕事を辞めたい

人手不足によって労働時間や業務量が増え、看護師の疲労感が強くなります。

慢性的な疲労は強いストレスや悩みの原因となり、最終的に「仕事を辞めたい」という気持ちにまでなってしまうのです。

心のゆとりがなくなる

人手不足の問題は、看護師の心のゆとりとも大きく関係しており、労働環境や精神面にも影響が出ます。

その例をいくつか挙げてみましょう。

  • 人間関係を悪化させる
    仕事に追われるあまり時間や心の余裕がなくなり、同僚や患者さん、医師とのコミュニケーションの回数が減って質が下がり、人間関係を希薄で難しいものにしている。
  • 仕事の達成感を減らす
    こなすべき業務量が多すぎて看護が事務的になり、効率を求めているうちに達成感を感じにくくなる。
  • 疲労感が増し、意欲を減らす
    常に疲れている状態で、目標ややる気、やりがいを見失ってしまう。

看護師という職業は、ただでさえ体力的にも精神的にもストレスの多い仕事です。

その上このようなストレスフルな環境に置かれることにより、看護師はさらに苦しい状況に追い込まれているのです。

自分の健康が危ない?

患者さんの健康に責任を負うはずの看護師の健康が危険にさらされています。

約半数もの看護師が下記のような症状を自覚しています。あなたは大丈夫ですか?

身体的な症状
  • 全身がだるい
  • 腰痛
  • 眠気
  • 目や胃の調子の悪さ
精神的な症状
  • 何となくイライラする
  • 憂うつな気分になる
  • 根気が続かない

また、約6割の看護師が痛剤・睡眠剤・安定剤・抗うつ剤などの薬を常用しているという調査結果もあります。

自分の健康を犠牲にして、不安を感じながら仕事をしているのです。

看護業界の課題

人手不足を解消することで、これまで挙げてきた問題がすべて解決するわけではありませんが、改善される可能性は十分にあります。

人手不足を解決することがすべての始まりと言っても言い過ぎではありません。

10人に1人の看護師が辞めている

日本看護協会の調査では、2011年の離職率は常勤看護職員が10.9%、新人看護職員が7.5%という結果になっています。

離職率は減少傾向にありますが、ほぼ毎年10人に1人の割合で辞めていることになります。

離職率は毎年それほど変わらず、看護師の大量離職が毎年繰り返されています。

そのため看護業界は慢性的な人手不足であり、職場定着への対策が必要とされています。

復帰できない潜在看護師

潜在看護師とは、看護師の資格を持っていながら看護師として働いていない人のことで、現在約60万人近くいると言われています。

潜在看護師を減らすことができれば人手不足の解消も期待できます。

今以上に潜在看護師を増やさず、また、潜在看護師の職場復帰を促すためには、厳しい職場環境や労働条件の改善が求められます。

1番の課題は「働きやすい環境」

どんなに職場環境や労働条件を見直して制度を変えても、それが実現されなければ意味がありません。

サービス残業をなくす、休憩・休暇を取るなどの労働基準法を満たすことは当然のことです。

それ以外にも、家庭と仕事を両立できる、仕事に見合った評価・待遇など、現場の看護師の声を取り入れることも必要です。

看護師が一人の労働者としてきちんと社会に認められるような仕組みや、専門職にふさわしい働く条件整えることが看護業界に求められています。

辞めたいと思った時は-新人看護師の場合

「辞めたい」と思っているとマイナスのことばかり考えてしまいます。

まずは冷静になり、「辞める」ではなく「自分にできることは何か」を考えてみましょう。

辞めたい理由は「理想と現実のギャップ」

「こんなはずじゃなかった・・・」
「想像と全然違う・・・」

現場に出て、こんなふうに思ったことはないでしょうか?

学生時代は、患者さん一人ひとりの心身の状態をしっかりと見極め、その上でこれから行う看護の意味をよく考えて実践するように教えられてきました。

ところが、現場では毎日の業務についていくのが精一杯な上に、一人前の仕事を求められて戸惑いを感じることも多いのではないでしょうか。

また、経験のない医療現場に足がすくんだり、新しい業務についていけなかったりと悩みは多いものです。

「理想と現実のギャップ」の壁にぶつかり、「一生懸命勉強してやっと看護師になったけど、私は看護師に向いていない」と自信を失ってしまってはいないでしょうか。

3年は辞めないほうがいい3つの理由

新人看護師であれば、3年は辞めないことを1つの考えとして提案します。

看護師として同じ職場で3年働いてから今後の身の振り方を考えても決して遅くはありません。

看護師として自立するには一定の期間がかかる

看護師として現場で働く以上、一人前の仕事を求められることは当然のことです。

しかし、最初から完璧を求められているのではありません。

仕事に取り組むあなたの姿勢を見られているのです。

看護師に向いているのかどうかは、たとえ自分のことであってもすぐには判断できません。

特に看護師の業務は幅広いので、それらを一通り経験するには時間がかかります。

また、そのすべてが自分に向いていて好きな業務とは限りません。

今の職場を辞めて違う病院や施設に勤務することになっても、経験が少なければまた同じような壁にぶつかり、またい「辞めたい」を繰り返し、あなたの可能性や成長を潰してしまいます。

ですから、腰を据えて自分の仕事と向き合い、目の前の仕事を懸命に、納得がいくまでやる習慣を身につけることが大切です。

経験を増やし自分の強みと弱みを知る

どんな業務でも、最初からうまくいくわけではありません。

むしろうまくいかないことの方がずっと多いはずです。

今はひたすら実践と学習を繰り返し、経験を増やしていくことしかありません。

そうすれば自分には何ができるのか、何ができないのかが見えてくるはずです。

迷い悩んだこともいずれはあなたの力になり、「あなたにしかできない看護」につながっていきます。

自分なりのやりがいや目標を見つける

毎日が精一杯といううちは、看護の楽しさややりがいを感じることは難しいでしょう。

しかし、時間や経験を重ねていくうちにさまざまなことを感じる余裕ができ、自分を客観的に見ることができるようになります。

仲間を意識することで自分の苦手な部分が見えて新しい目標が見つかったり、尊敬できる先輩ができるようになります。

何より看護を通して患者さんとかかわることでやりがいを見つけ、自分が目指してきた看護が理想ではなく現実のものだと感じることができるようになってくるはずです。

辞めたいと思った時にできること

自分の気持ちや感じていることを伝える

新人という立場では自分の意見や考えを伝えることはとても難しいでしょう。

だからと言って何も言わなければ何も伝わりません。

あなたを指導する先輩の看護師は、あなたが何も聞かなければ「わかっている」と判断します。

怒られたくない、迷惑をかけたくないと遠慮してそのままにしておけば、わからないことや困ったことが増えてしまうだけです。

先輩の看護師や上司は、あなたが仕事を間違って覚えてしまったり何かミスを起こしてしまうことのほうがずっと心配なのです。

また、あなたからの質問や意見は無駄なわけではありません。

ついつい事務的になりがちな業務も、あなたの気づきによって見落としや見過ごしを防ぐことにつながることもあり、いい刺激になります。

何よりも、あなたが先輩の看護師や上司に積極的にかかわることは、結果的に自分の成長を早めることになるのです。

ですから、まずは勇気を出して「困っている」「わからない」と正直に伝えていくことを心がけてみましょう。

先輩の看護師に相談する

辞めたいと思う前に、悩んでいることや困ったことがあれば先輩の看護師に相談するようにしましょう。

あなたのつまずきは、おそらく先輩の看護師もほとんど経験して乗り越えているはずです。

あなたの悩みは、あなた一人のものではなく職場全体の問題でもあるのです。

日頃からコミュニケーションをとって信頼関係を築くことで、今後の業務もスムーズに進みます。些細な悩みも溜めずに相談しましょう。

自分にしかできないことを見つける

今はプリセプター制度やクリ二カルラダー制度など、病院の理念や方針によって目標が決められていることもあります。

これらの目標を達成することは大切ですが、まずは初心に戻って自分にできることを考えます。

自分の理想とする看護師像や、看護師を目指したきっかけを思い出すのもいいでしょう。

また、小さなことでも自分にできることを見つけ、毎日実践することも大切です。

  • 自分の体調をしっかり管理して、毎日元気に業務ができる
  • ナースコールに積極的に出る
  • 患者さんの話を傾聴する
  • わからなかったことはその日のうちに調べる、勉強する、質問する

このような小さな積み重ねが、あなたにとって大切な財産になります。

新人時代の「辞めたい」克服法-現看護部長の乗り切り方

看護師として働き続けるために

立場や環境が違っても、看護師として働く中で経験することや感じること、悩みや問題は似ています。

特に新人時代の悩みは誰もが経験するものと言ってもいいでしょう。

それらの問題を乗り越えるか、その前に辞めてしまうかは、実はほんの少しの考え方の違いによるものなのかもしれません。

ここでは、看護部長になった先輩看護師の方が、新人時代に「辞めたい」と思った時の対処法や考え方の事例を2つ紹介します。

看護師をやめたくなったときに読む本
(参考文献:看護師をやめたくなったときに読む本―私はこうして乗り越えた!看護部長25人の乗り切り力 )

タイトルの通り、看護師を辞めたいと思った時に読んで欲しい本です。

新人時代に誰もが感じる不安や困った出来事などを体験談とともに紹介しています。

さまざまな看護の場面や患者さんとの関わりの中で感じたこと、自分を見つめ直したこと、自分なりに努力したこと、今だから言えることなどが書かれています。

「また明日、新しい気持ちで頑張ってみよう」と思えるエピソードに出会えるはずです。

◆『人は皆、可能性に満ちている』
(現・戸田中央医科グループ 医療法人社団東光会 東所沢病院 看護部長 笠原美代子さん)

  • 新人時代は「できない」とレッテルを貼られるようなナースで、先輩から「1年もつとは思わなかった」と言われたこともあった。
  • 自分なりに努力していることや思っていることは、言葉にして伝えなければわかってもらえないことに気づき、自分から積極的に先輩に話すようにしたことで自分の存在を気にかけてもらえるようになったと実感。
  • 仕事が遅いと言われ続けたが、「患者さんやご家族との対話を大事にする」という自分なりの看護へのこだわりを持ち続けてきた。患者さんに頼られることが嬉しくてやりがいを感じることができた。
  • 高齢者看護と出会い、「人は誰でも可能性に満ちている」ことに気づき、その魅力を知ったら看護師は辞められないほどの素晴らしい仕事であると思えるようになった。
  • 患者さんのことだけでなく、自分のこともあきらめないで!新人の自分にはできないのが当たり前くらいに思って、「自分にはできない」から「何ができるようになりたいか」というふうに考えを変えていくことが大切。

◆『ナースほど誇れる仕事はありません』
(現・医療法人社団緑成会 横浜総合病院 副院長・看護部長 桃田寿津代さん)

  • 新人時代は特に「私が助けなければ」という気持ちに突き動かされ、さまざまな現場に出向いていた。
  • 人の倍、体を動かすように心がけ、人の嫌がる仕事を率先してやってきた。悔しいこともたくさんあったが、「絶対に負けたくない」という気持ちで必死に勉強していた。
  • 若い時は仕事を選ばず、すべてを楽しむことが大切。人の人生にかかわれることが看護師のおもしろさであり、私の自慢。
  • 部下の医療事故を経験し、あまりの辛さにナースを辞めようと思ったことも。でも働くことでこの借りを返そうという必死で働いた。そこから逃げなかったからこそ今の自分があると思えるようになった。
  • ナースとして自信がもてない人には、「くよくよしないで、苦労すればするほど実がなるから」と伝えたい。

辞めたいと思った時におすすめの本

(参考文献:看護師の仕事につきたい! (教えて、先輩!私の職業シリーズ)

日本看護協会会長の坂本すが氏の書籍です。

これから看護師になる人に向けて書かれている本ですが、著者が看護師になるまでの経緯だけでなく、看護師として働くために必要な考え方なども具体的にわかりやすく書かれています。

看護師を目指そうと思った時の新鮮な気持ちを思い出すと同時に、看護師の現在・未来の働き方について考えるきっかけになる一冊です。

また、「へこたれない看護師を!」が著者のモットーで、自信をなくし後ろ向きの看護師を勇気づけてくれるにちがいありません。

辞めたいと思った時は-続けたい気持ちが強い場合

辞める理由は2つ

看護師が仕事を辞める理由は大きく分けて2つあり、その理由は新人看護師とは違います。

1つは個人的な理由で、「妊娠・出産」「結婚」「子育て」の順で割合が高くなっています。

もう1つは職場環境や労働条件による理由で、「勤務時間が長い・超過勤務が多い」「夜勤の負担が大きい」「責任の大きさ・医療事故への不安」の順で割合が高くなっています。

看護師が辞める大きな2つ理由「個人的理由」と「職場環境」
(参考:日本看護協会「日本の医療を救え」

看護師を続けることを検討した方がいい3つのケース

仕事へのやりがいや喜びを感じている場合

残念ながら、あなたの理想がすべて叶う職場はありません。あなただけでなく、みんな何かしらの不満や悩みを抱えています。

そのような状況でも、やりがいを感じることができたり、信頼できる仲間がいたり、目標があったり、楽しいと思えることがあるのであれば、もう一度踏ん張ることができるはずです。

突発的に辞めたい、何となく辞めたいと思った場合

毎日の看護の中では、上司に怒られた、ミスをした、嫌な患者さんの担当になったなど、辞めたいと思わせる出来事が必ず起こります。

それらの問題は誰もが通る道であり、それを乗り越えることであなたの看護師としての経験や実力が増していきます。

何かあったら「辞めたい」ではなく、その問題から逃げずに「それをどう乗り越えていくか」というふうに考えてみましょう。

また、「何となく辞めたい」というように辞めたい理由がハッキリしない場合も同じです。

明確な理由がなければ辞めたことを後悔するかもしれません。

自分なりの目標ややりがいを見つけ、看護の楽しさやおもしろさを探してみましょう。

辞めたら後悔するかも、と思ううちは、まだあなたにできることが残っているはずです。

施設を変えても問題が解決しない場合

辞めたいと思う理由はさまざまですが、施設が変わっても似た問題が起こる可能性があります。

例えば人間関係についての問題です。

施設を変えても解決しない問題の場合は辞めることを即決せず、慎重に考えましょう。

人間関係の問題の場合は誰かに相談したり、自分に原因がないかを考えたり、日頃の言動を見直したりと、まずは自分にできることがないかを考えることから始めましょう。

こちらの記事では人間関係の悩みを乗り越える方法について詳しく解説しています

「辞めたい」克服法-現看護部長の乗り切り方とは

看護師として働き続けるために

(参考文献:看護師をやめたくなったときに読む本―私はこうして乗り越えた!看護部長25人の乗り切り力 )

ここでは、看護部長になった先輩看護師の方が「辞めたい」と思った時の対処法や考え方の事例を2つ紹介します。

どのような問題にぶつかり、それをどう乗り越えたかという実体験に基づく先輩方の声は、きっと今のあなたに、そしてこれからのあなたに参考になるはずです。

この方たちは今も看護の発展のために尽力し、看護師の仕事が社会に認められるために努めています。

「看護を変える」側の立場を目指してみるのもいいかもしれません。

先程も紹介しましたが、すべての看護師に読んで欲しい本です。

辞めたいと思うような厳しい環境の中で困難や悩みを乗り越え、「看護師を続けてきた」ことは本当にすごいことです。

看護部長を経験した25名の体験談が綴られていますが、そのすべてに共通していることは、自分なりの信念や目標があるという点と、患者さんとの忘れられないエピソードがあるという点です。

悩んでいるのは自分だけではないことに気づき、仕事を楽しみたいという気持ちになれるはずです。

◆『一瞬、1秒の場面をたいせつに』
(現・獨協医科大学病院 看護部長・副院長 佐山静江さん)

  • 自身の出産を機に仕事を続けるか悩んだ。看護師を続ける源になったのは、患者さんからの「ずっと看護師を続けてね」という言葉だった。
  • 患者さんとのかかわりの中では、ほんの一瞬、1秒が大事な意味を持つことがある。そこで足を止め、その場面と向き合うことができるかが大事。患者さんから声をかけられた時は、自分が必要な人として選ばれたと思って対応することを心がけた。
  • 今でも、「あれで良かったのかな」と思い返すことがある。納得するまで問題と向き合うために振り返りを大事にし、少しずつでも成長していく自分を楽しんでほしい。看護師不足に甘えて楽なほうへ流れないでほしい。

◆『「なんとかしたい」気持ちがキャリアになった』
(現・医療法人財団利定会 大久野病院 看護部長 富加見美智子さん)

  • ナースになって5年目で倦怠期があり、「これでいいんだろうか」と思い始め、生き生きできない自分に気づく。
  • 患者さんからの「ナースにとって仕事ができるってどういうこと?」という質問がきっかけで、テキパキと仕事をこなすだけではなく患者さんの様子をみることの大切さに気づく。
  • 呼吸療法との出会いによって、患者さんに対して「なんとかしてあげたい」という気持ちが強まり、いろいろと看護を工夫するようになった。
  • 「看護は手当て」であり、「機器に頼らずにできることこそが看護だ」という信念を持てるようになった。
  • 何かで悩んでいるのであれば、「こうでなきゃ」という思いから離れ、「自分の目指す看護」や「目指す人」を見つけることが大切。

辞めたいと思った時におすすめの本

看護の力
(参考文献:看護の力 (岩波新書)

看護の原点がわかる本です。

看護の原点は、「誰もがもっている自然に治る力を引き出すこと」と位置づけ、本来あるべき看護の姿について書かれています。

医療とは違う、看護の役割が見え、看護師が必要とされていることを実感できるのではないでしょうか。

問題や悩みを抱えて自信をなくしているのであれば、看護師としての誇りや目的を取り戻すきっかけになる一冊です。

辞めたいと思った時は-辞めたい気持ちが強い場合

看護師を辞めることを検討した方がいい3つのケース

自分を大切にできていないと感じている場合

辞めるか辞めないかを考える時、一番優先して欲しいことは「自分自身を大切にする」ことです。

看護師は責任感が強く献身的な人が多いため、つい自分のことを後回しにしてしまうことがあります。

その気持ちは大切ですが、それが必ずしも良いとは限りません。

看護師が働く現場では、症状の急変や患者の死など非日常的なことが当たり前のように起こり、一瞬たりとも気を緩めることができません。

また、痛みや不安を抱える患者さんたちとも向き合わなくてはなりません。

看護師の心身の健康が看護や患者さんに大きな影響を与えていることを忘れてはいけません。

看護師として「自分自身が健康でなければ、患者さんの健康や安全は守れない」ということを意識し、自分の健康を最優先に考えることが大切です。

キャリアアップなど、明確な目的や目標がある場合

資格取得やキャリアアップをしたいと思っても、働く施設によっては環境が整っていないケースや、そもそもキャリアアップに対する支援制度や考え方の違いもあります。

今の施設に不満がなくやりがいを感じている場合でも、自分の意志を尊重しましょう。

辞めると言うとマイナスのイメージを持たれやすいですが、自分の目標や夢を叶えるための前向きな退職もあります。

病院にとっては意識の高い看護師を失うのは大きな痛手ですが、あなたの考えをきっと理解してくれます。

あなたの成長は医療の発展につながっていくのですから、自信を持って前に進んでいきましょう。

施設を変えることで問題が解決する場合

夜勤や休暇などの勤務形態についての問題は、施設を変えることで解決できる場合があります。

看護師の9割は女性ですから、結婚や出産や育児など人生の転機によって働き方を変える必要が出てくるケースも少なくありません。

看護師として働き続けるためには家族の理解や協力も不可欠ですから、きちんと相談し、どのような働き方をしたいのか考えておく必要があります。

ただし、施設や勤務形態を変えることで、これまでと待遇面ややりがいが変化することもあるので、辞めた後のことについても考えておかなくてはいけません。

辞めようと思った時に見直す5つのプロセス

どのような理由あっても、まずはできるだけ今の施設に残ることを考えるようにしましょう。

退職や転職は時間がかかり、忙しい看護師にとって負担が大きいこともありますが、施設によっては看護師の希望を聞き、歩み寄ってくれるケースもあります。

自分にできることを精一杯やったか

辞めたいと思っている時は、不満や不安を多く抱えているので自分を見失いがちです。

そのため、問題の原因がすべて周りによるものだと思い込みやすくなります。

それでは解決できることも解決できなくなります。

一人で抱え込んだり感情的になったりせず、日頃の言動や仕事に対する姿勢、コミュニケーションの方法などを振り返ってみましょう。

たくさんの人と関わる看護師には、自分を冷静に判断して改善・成長していく力も必要なのです。

自分が譲れないことは何かを見極める

看護師として働く上であなたが一番大切にしたものは何かわかっていますか?

辞めたい理由が個人的な理由であっても職場環境による理由であっても、譲れない信念や絶対に守りたいものがあるのではないでしょうか。

また、自分が妥協できるのはどこまでかを線引きしておくと、これからの方向性が見えてきます。

そして、あなたが看護師になった理由ややりがい、喜びを感じた出来事などをこの機会に見つめ直してみることも大切なことです。

看護師のやりがいや自分と向き合う方法はこちらの記事で。

活用できる制度や利用状況の情報を集める

結婚や出産などは人生の大きな転機であり、働き方を変えなくてはいけない場合も出てきます。

そんな時に活用したのが福利厚生です。

施設によって内容は異なりますので、自分の施設の制度について調べてみましょう。

また、その制度を活用した人から話を聞くことも今後の働き方の参考になります。

福利厚生の一例
  • 育児休暇や夜勤の免除
  • 労働時間の短縮
  • 部署の異動

自分の考えを整理して伝える

あなたがどのような働き方を望んでいるのかを上司や施設側に伝える必要があります。

どんな問題や不安を抱えているのか、それを解消するためにどんな働き方を希望しているのかなど、思っていることをきちんと伝えましょう。

その際、自分の希望をすべて通そうとするのではなく、施設側の考えや意見も聞いて歩み寄ることが大切です。

退職・転職を具体的に考える

このようなプロセスを経てもあなたの辞めたいという気持ちが変わらなければ、退職や転職を具体的に考える段階にきたと言えるでしょう。

あなたが納得して辞めることができるような状況になれば、辞めたことを後悔することもありません。

ここまでくれば、無理をして我慢し続ける必要はありません。

ここからは気持ちを切り替えて次の新しいステージに進んでいきましょう。

看護師の理想と現実のギャップと向き合う

今の施設を辞めるにしても続けるにしても、今後も看護師として働くのであれば、看護師の仕事の理想と現実に大きなギャップを感じて悩むことがあるかもしれません。

「十分な看護ができていない」達成感を感じられない看護師が約6割

十分な看護ができていないと感じる看護師が約6割
(参考:日本医療労働組合連合会『看護職員の労働実態調査「報告書」』

「十分な看護ができていますか?」という問いに対し、「できていない」と回答した看護師が約6割にのぼり、仕事での達成感を得られていないことがわかりました。

看護師という職業に憧れを抱き自分なりの看護の理想を掲げ、それを達成しようと頑張れば頑張るほど、現場の看護とその理想とかけ離れてしまい達成感を見いだせなくなっています。

人の役に立ちたい、自分の思いや理想を実現したいという気持ちが強い看護師は、看護師として働くことに疑問を感じたり、自己の評価を下げたりすることにつながり、辛い現実をつきつけられています。

そもそも看護とはどうあるべきなのか

「看護という営みそのものは、古くから人々の暮らしの中で生まれ、
肉親をはじめ、ともに暮らす人々を思いやり、世話することを通じて発展した」

著者:川嶋みどり『看護の力』(岩波新書)

そもそも看護とは、生活の中で生まれ、怪我や病気で苦しんでいる家族をいたわる行為でした。

大切な人を自分の手で世話をすることが看護の始まりです。

それが発展して職業となり、現在の法律では「診察の補助」と「療養上の世話」の2大業務と位置づけられています。

「診察の補助」と「療養上の世話」の葛藤

この2大業務は同じ看護として扱われなくてはならないはずですが、看護師の葛藤を招いてしまうことがあります。

現在の診療報酬制度は、医療行為を行うことによって報酬を得られる仕組みになっています。

そのため、看護師の仕事が「診察の補助」という診療面に偏ってしまっているのです。

多くの看護師は、看護本来の役割を果たしたい、患者さんの満足を得たいと思っているため「療養上の世話」ができないことに悩んでいます。

医療が高度になり、看護師に求められる「診療の補助」の知識や技術が求められるようになればなるほど、この葛藤は大きくなっていくと考えられます。

葛藤と付き合う覚悟

「診察の補助」も「療養上の世話」も看護師の大事な仕事であり、どちらも患者さんのためにあります。

自分の理想とは違っても、妥協したりあきらめるのではなく、この葛藤と前向きに長く付き合っていくことを考えなくてはなりません。

看護には、これ以外にもさまざまな葛藤がつきまといます。

また、看護には必ずしも「正解」があるわけではなく、「終わり」も「完璧」もありません。

ですから、人によって考え方も違えば対処法も変わります。

大切なのは、常に向上心を持って自分なりの考えや信念を探し、あなたらしい看護を求め続けていくことです。

だから看護の仕事はおもしろく、自分を成長させ続けることができる素晴らしい仕事なのです。

看護師として働くということ

看護師として働き続ければ、「辞めたい」と思うことも一度や二度ではありません。

しかし、それを乗り越える度に看護師としての誇りや自信が高まり、あなたらしい看護へとつながっていきます。

辞めたいと思う時は、何かを変えるチャンスでもあります。

もう一度、看護師という仕事と向き合ってみませんか。

後悔しない職場の探し方

次こそは後悔しない職場を探すためには、求人情報を集め、自分に合いそうな求人が見つかったら、さらにその職場について詳しく調べる必要があります。

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