看護師にとって、うつ病は非常に身近な病です。
過重労働や重い責任など、常にストレスにさらされている看護師には、うつ病を発症しやすい条件がそろっているのです。
毎日不安な気持ちで押しつぶされそうになる。
寝たいのに眠れない。
このような症状はありませんか?
この記事では、もしかしてうつ病になったかもしれない?と不安に感じている看護師さんが、これからどのようにうつ病や仕事と向き合うべきか?について解説しています。
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うつ病は看護師の職業病?医療業は精神障害ワースト2位!
統計から見るうつ病看護師の多さ
厚生労働省が発表した「平成26年度精神障害の労災補償状況」によると、看護師を含む医療業は、うつ病を含む精神障害による労災請求件数が2番目に多い職種であることがわかります。
精神障害の労災請求件数の多い職種
業種 | 請求件数 | |
1 | 社会保険・社会福祉・介護事業 | 140 |
2 | 医療業 | 95 |
3 | 道路貨物運送業 | 84 |
4 | その他の事業サービス業 | 64 |
5 | その他の小売業 | 51 |
(参考:精神障害の労災補償状況)
職種をさらに細かく分類すると、「保健師,助産師,看護師」の精神障害による労災給付件数は、ワースト9位です。
精神障害の労災給付支給決定件数の多い職種
業種 | 請求件数 | |
1 | 一般事務従事者 | 56 |
2 | 法人・団体管理職員 | 39 |
3 | 商品販売従事者 | 34 |
4 | 製品製造・加工処理従事者(金属製品を除く) | 31 |
5 | 自動車運転従事者 | 29 |
6 | 営業・販売事務従事者 | 25 |
7 | 接客・給仕職業従事者 | 19 |
8 | 情報処理・通信技術者 | 18 |
9 | 保健師,助産師,看護師 | 17 |
9 | 営業職業従事者 | 17 |
このような結果から、看護師は、うつ病を含む精神疾患にかかりやすい職業であると言えます。
看護師がうつ病にかかりやすい理由
今やうつ病は看護師の職業病ともいわれ、看護師である以上、誰もがうつ病になる危険性を秘めています。
では、なぜ看護師がうつ病になりやすいのでしょうか?
それには、以下のような看護師ならではの要因があります。
- 命を預かっているという責任感やプレッシャーがある
- 仕事量が多く、時間に追われる仕事である
- 交代制勤務により生活が不規則になる
- 看護師への理解が不足している医師との関係
- 患者さんやご家族からの無理な要求
- 女性が多い職場ならではの人間関係
- 看護師には責任感の強い人が多い
もしかしてうつ病?と思ったら?
うつ病の症状とセルフチェック
うつ病の症状は人によってさまざまですが、一般的に以下のような症状があります。
- 憂うつで気分が沈む
- イライラする
- 細かいことが気になる
- 自分を責めてしまう
- 死にたいと思う
- 眠れない
- 食欲がない
- 食事がおいしいと感じられない
- 集中力がなくなる
- 飲酒量が増える
- 動機がある
- めまいがある
- 疲れやすくなる
(参考:うつ病の症状【厚生労働省】)
上記の症状に心当たりがある場合、うつ病の可能性を疑ってみましょう。
厚生労働省のHPでは、セルフチェックで心の状態を知ることができるチェックシートがあります。
5分程度の簡単な質問に答えるだけで、かなり詳しい診断結果を知ることができます。
・「5分でできる職場のストレスセルフチェック」(厚生労働省)
うつ病の疑いがあったら病院の診断を
必ず病院の診察を受けましょう。
診断の結果によっては、そのまま病院から診断書を発行してもらい、仕事を休んだ方が良いケースもあります。
うつ病になったらどうすればいい?看護師のうつ病との向き合い方
ここでは、うつ病になってしまった看護師の方の、仕事と過ごし方についてご紹介します。
仕事について
仕事を休む勇気を持つ
うつ病と診断されたら、しばらく休暇を取り、仕事から離れましょう。
症状によっては、職場に診断書を提出し、傷病休職を取得した方が良い場合もあります。
とにかく、ストレスの原因となっている職場や仕事から離れることが大切です。
なぜなら、職場の人間関係や仕事のストレスがうつ病の原因になっている場合、うつ病を抱えたままストレスの原因である仕事を続けることは、うつの症状を悪化させる危険性があるためです。
さらに、うつ病の症状として注意力や集中力が散漫になることがあります。
このような状態で、患者さんの命を預かる責任の重い仕事を続けていると、重大な医療ミスにもつながる恐れがあります。
うつ病患者の多くは、責任感が強くまじめな性格がわざわいして、どんなに辛くても仕事を休まず無理を重ねて症状を悪化させてしまうことがあります。
しかし、うつ病になった時に一番に優先するべきは、自分の体です。
あなたが仕事を休むことで職場に対して感じる罪悪感は、元気になってから恩返しをすればよいのです。
退職は早まらないで!
「職場に行くのが怖い。もう辞めてしまえば苦しさから解放される」
「職場に迷惑をかけている。いっそ辞めた方が職場にとってもいいのでは?」
うつ病になって1ヶ月前後の時点では、このような考えに陥りがちです。
しかし、絶対に早まって退職してはいけません。
うつ病になると、症状が落ち着くまでの間、冷静な判断ができなくなります。
この時期に退職などの大きな決断を下すことは絶対にしないでください。
この時期は、職場と相談して長期休暇や休職をとることで職場から離れるべきです。
2、3ヶ月ほどすると、だんだんと症状も落ち着いて、今後のことを冷静に考えることができるようになります。
今の職場を辞めるのか続けるのかについては、症状が落ち着いてから、医師や家族、上司と相談しながらゆっくりと考えていきましょう。
毎日の過ごし方と体調管理
うつ病になった時の毎日の過ごし方で、気をつけるべき点についてご紹介します。
- 十分な睡眠をとる
- バランスの良い食事をとる
- 適度な運動をする
- 外の空気を吸う
- 人と話す
規則正しい生活をして生活リズムを整えることが大事です。
また、仕事がお休みだと家に引きこもりがちになってしまうので、体調が良い時にはウォーキングや山登りなど、意識して外に出るようにしましょう。
また、時間に余裕のあるこの時期、家族や友人とじっくり会話をする絶好のチャンスでもあります。
人と会話をすることで、新しい考え方に気づいたり、自分を振り返ることができます。
うつ病になりやすい方は、真面目で完璧主義の一面を持っている方が多い為、人と話をすることで、自分の性格や考え方の偏りを知ることも大切です。
- 過度なアルコール摂取
- 車の運転
- 無理をする
積極的に外に出たり、人と会話をするなどのことは、うつ病を克服するためにやって方がいいことではありますが、決して無理をしてはいけません。
うつ病の時は気持ちが不安定なため、どうしても外に出たくない時や、何もしたくない時もあります。
そんな時は、自分の心に素直に従って、無理をしないことが大切です。
うつ病は必ず治る病気です。
ですが、焦ったり、無理をすることは逆効果です。
今はじっくり、ゆっくり自分の心と体調と向き合ってください。
看護師として働き続ける為に – うつ病との向き合い方
休職から復職する時の注意点
うつ病の症状が落ち着いてくると、仕事への復帰を考えます。
しかし、仕事への復帰は、慎重に検討することが大事です。
職場復帰に向けた4つのステップ
自分でうつ病が良くなり、仕事に復帰できる状態になったと思えるようになることは、確かにすばらしい回復です。
しかし、その判断を自分一人だけでしてはいけません。
うつ病からの復職を検討する際には、必ず以下のステップを経ましょう。
- 家族や友人への相談
- 主治医の先生に相談
- 職場の上司へ相談
- 本人と主治医の先生、職場の上司の3人で職場復帰に向けて話し合いをする
①家族や友人への相談
まずは、家族や友人に、職場復帰についての相談をしましょう。
あなたの様子を最も近くで見ていた人からの意見は、あなたの回復の度合いを冷静に見極めてくれます。
②主治医の先生に相談
次に、主治医の先生へ職場復帰の意思があることを伝え、専門家の立場から職場復帰が可能かどうかを判断してもらいましょう。
③職場の上司へ相談
主治医から職場復帰へのGOサインがでたら、職場の上司に、「自分が職場復帰をしたいこと」「医師からの了承を得られたこと」を伝えます。
④本人と主治医の先生、職場の上司の3人で職場復帰に向けて話し合いをする
職場復帰をスムーズにおこなうための調整をおこないます。
これは仕事に復帰をした途端、ストレスにさらされることでまた病状がぶり返す危険性を避ける為です。
担当の医師から職場の上司に、あなたの病気の状態や、職場で配慮するべきことなどを伝えてもらいます。
職場の上司は、それを踏まえて、あなたの職場復帰の時期や、復帰後の仕事内容、働く時間帯などを、あなたと話し合いながら決めます。
この際、部署異動についても上司と相談しましょう。
一般的に、元の部署ではなく別の部署で復職をした方が、うつ病からの復職成功の可能性は高くなります。
復職直後は職場復帰のリハビリ期間
職場復帰後は、これまでの遅れを取り戻すべく、すぐにでもパワー全開で働こうとしてはいけません。
復帰後すぐは「職場復帰のリハビリ期間」として、自分の体調と相談しながら、様子を見ながらの仕事をするようにしましょう。
焦る気持ちはわかりますが、せっかくここまで回復したのに、今無理をしてしまったら、取り返しのつかないことになってしまいます。
仕事に復帰するということは、うつ病の要因となったストレスに再び近づくということです。
少しずつストレスに慣れていき、ストレスへの耐性をつけることが大切です。
転職する時の注意点
今の職場ではどうしても、ストレスの原因を取り除くことができず、職場復帰をするとまたうつの病状が悪化する恐れがある場合は、職場を変えることを検討しましょう。
仕事選びについて
新しい職場探しのポイントは、「うつ病の原因となったストレスのない職場」を見つけることです。
例えば、交代勤務で生活リズムが崩れることがストレスの原因となっていたのであれば、「日勤のみの仕事」を選ぶこと。
人間関係がストレスの原因になっていたのであれば、「人間関係の良い職場」を選ぶこと。
さらに、はじめから常勤として働くのではなく、自分の体調と相談しながら「パートタイム」で職場復帰へのリハビリをすることも検討しましょう。
看護師の仕事探しの具体的な方法については、以下の記事を参考にしてください。
看護師の転職成功に不可欠な「職場の情報収集」3つのポイント
求人先にうつ病の事実を伝えるべき?
うつ病で退職した看護師が、転職する際に悩むのが「求人先にうつ病の事実を伝えるべきか?」ということです。
結論から言うと、うつ病の事実は、採用面接の時点で新しい職場に伝えるべきです。
それは、入職後にあなたの病気に対する職場の理解を得る為です。
うつ病であった事実を隠して入職して、無理をして働いたせいで病状が悪化するのは、あなたにとっても職場にとっても良い事ではありません。
新しい職場には、「うつ病であったこと」「今は仕事復帰ができるほど回復していること」「うつ病の原因となったストレス」「職場で配慮してほしい事」を必ず伝えましょう。
うつ病を克服した先輩看護師の体験談
うつ病と向き合いながら、看護師を一生の仕事として続けている看護師さんはたくさんいます。
ここでは実際にうつ病になったことのある看護師の方の声を紹介します。
あなたのうつ病との付き合い方、仕事との向き合い方を考える参考にしてみてください。
新卒で病院(急性期)に入職→二ヶ月目から吐き気・拒食・不眠・不安でフラフラしながらも七ヶ月勤務→体調不良で休んで出勤するのが嫌になり自傷→適応障害と診断され二ヶ月休職→退職 です。
引用:匿名さんの投稿
服薬・通院しながら生活するために派遣で訪問入浴などをし、今は服薬も通院もなくなり施設で働いています。
派遣で看護師やってみて私には給料ややりがいより休みと少残業が大切なんだと気づき、今の仕事につくときも休みと残業の条件は譲らなかったです。
お陰で条件よりもよいところを斡旋してもらい、まだ一月ちょっとですがかなりスキルアップもしているように思います。
お休みって自分のためのことのようですが、実は職場全体の雰囲気にも関わることなんだなって今は思います。
長く看護と付き合うための初選択なので、今後どうなるかはわかりませんが、自分を縛り付けすぎないようにやっていきたいです。
私は今、3年目の看護師ですが、1年目の6月ごろから適応障害、抑うつが悪化したために最初の職場(病棟)を休職・退職しました。
引用:Yukiさんの投稿
今の職場に出会うまでの2ヶ月間はゆっくりと自分を見つめなおして、病気のことも受け入れて、勤める病院にもちゃんと分かってもらおうと決めました。
今の職場に出会うまで、病気のことをたびたび面接でお話ししましたが、やはり、それを理由に不採用となったこともありました。
でも、私はそういう自分であることを伝えて、頑張るチャンスをくれる病院に巡り合えるまで面接を受けようと決めて、就職活動を始めました。
今の職場には
・病棟経験は3カ月弱しかない
・注射や点滴、採血の手技は研修でやったぐらいで現場での実施経験は多くない
・適応障害、抑うつで心療内科に通院中である
自分の全てをさらけ出して面接を受けました。
ここまで言われたら不採用にしたくなると思います。正直なところ・・・。
でも、院長先生は「今は落ち着いてるんでしょ?」と声をかけてくれて、「ここではこれこれこういう仕事がメインだから」とフォローしてくれました。
私は今、外来クリニックで働いています。
分かってもらうことは難しいです。今でも職場の人には「心の弱い子」というイメージはあります。
でも、それを今は仕事で返していくことが院長先生への恩返しだし、自分の成長にもつながっています。
おわりに
うつ病は、完全に回復するまでには長い時間がかかる病気です。
だからこそ、うつ病と向かい合いながら仕事を続けている看護師の方はたくさんいらっしゃいます。
うつ病と付き合いながら看護師の仕事をするうえで大切なのは、「無理をしないこと」「周囲の理解を得ること」です。
看護師として患者さんを笑顔にするためには、まずは自分が笑顔でいられるようにすることを忘れないでください。