皆さんの中には「精神科の看護師」として働くことに興味を持っておられる方も、多くいらっしゃいますよね?
精神科の看護師は、多くの看護師さんから「他の科に比べて勤務時間が決まっていること」「体力的に楽であること」「危険手当などの収入の面がよい」という理由から、転職(転科)先や復職先として人気があります。
また、近年ますます増える「心への医療・ケア」の必要性とともに、その需要は高くなって来ています。
しかし、他の科と同じように、精神科でも多くの看護師さんたちがさまざまなストレスに悩まされています。
特に人の心における病を取り扱う精神科の仕事柄上、人間関係や心のバランスなどの問題からストレスを受ける看護師さんも少なくないようです。
いったい精神科の看護師さんたちは、普段どんなタイプのストレスを抱えていて、どの程度の負担になっているのでしょうか。
また、それをどのように解消したり、対策を立てたりしているのでしょうか。
今回は、実際に精神科看護師が働く上で抱えるストレスの実態とその解消法などについてお伝えします。
みなさんもぜひ、参考にしてみては、いかがでしょうか。
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精神科の看護師が抱えるストレス事情
精神科の看護師さんが抱えるストレスは、残念ながら他の科や職業に比べて「大きい」のが事実です。
なので、しっかりとストレス解消や対策を考えながら、仕事に就いてほしいと思うのです。
ここでは、精神科の看護師さんが抱えるストレスの詳細について、具体的に見てみたいと思います。
様々なストレスのタイプ - もっとも多いのは「職場での人間関係」
久留米大学によって行われた2012年の調査によれば、精神科で働く看護師さんのおおよそ7割(当時の調査対象の67.6%)の人が、「精神的に不健康状態」にあると報告されました。
これは国民の54.2%がストレスを感じていたという、厚生労働省の調査を大きく上回る数字です。
つまり、精神科の看護師さんは、他の職業より「ストレスを受けやすい」職業である、と言えるわけです。
(参考:精神科における看護師のストレス及び職務満足度, 精神的健康度、布川智恵、稲谷ふみ枝、Kurume University Psychological Research 2012、No.11)
それでは、精神科の看護師さんが抱えているストレスにはどんなタイプのものがあるでしょうか。
大きく分けて、次の五つの項目に分類することができます。
- 仕事の量が多い
- 職場での人間関係(同僚・仲間同士)が良くない
- ドクターとの人間関係が良くない
- 看護師としての仕事内容そのものに向いていない
- 患者さんとの人間関係が良くない
いかがでしょうか。
ぱっと見て分かるように、「人間関係からくる問題」がストレスを感じる理由のほとんどを占めています。
しかもこの中でも特に
- 職場での人間関係(同僚・仲間同士)が良くない
- 患者さんとの人間関係が良くない
が、もっとも多いストレスの理由であることが分かってきました。
ここで、「職場での人間関係」の問題は必ずしも精神科にだけ限られた話じゃないように思えるかもしれませんが、2013年に岩手大学が行った調査では、インタビューした5人全員が「職場での人間関係」をストレスの理由と答えるなど、かなりのウェートを占めていることが分かります。
また、「患者さんとの人間関係」は精神科で患者さんを治療し看護・ケアしていくために重要な要素です。
しかし患者さんは、程度の差こそあれ心の病を持っているので、看護師さんに対して無理な訴えをしてきたり、過度な思い込み・被害妄想を仕向けたり、場合によっては暴力を振ったりすることがよくあります。
そうすると、頭では、「そういう病気・疾患だから」ってすごく良く理解しているのに、どうしても
“もうあの患者さんは、顔もみたくない!”
と思ってしまうような状況に出くわしやすくなってくるのです。
現役のみなさんの中には、一度そんな経験をされた方もいらっしゃるのではないでしょうか。
これらのストレスが重なっていくと、看護師さんは、次第に、
- 無気力な状態、または抑うつ状態になってしまう
- 不機嫌になり、怒りっぽくなる(怒ってしまう)
のような状態になっていくことがあります。
どうでしょうか。
みなさん、心当たりありませんか。
このような状況をそのまま放置しすぎると、いわゆる「バーンアウト」、燃え尽き症候群になり、最悪の場合現場に復帰できなくなることもあります。
これから精神科看護師として働く以上、この「患者さんとの人間関係からくるストレス問題」はなかなか避けることができないかもしれません。
(参考:精神科に勤務する看護師のバーンアウト予防に向けたストレス対処に関する研究、斉藤亜希子、岩手大学大学院人文社会科学研究科紀要22、2013年6月)
それでは、精神科に働く看護師さんたちは、実際どれぐらい今の職場環境や仕事内容に満足しているのでしょうか。次の節で説明したいと思います。
今の仕事に満足している精神科看護師さんは2割程度
前に紹介した久留米大学のチームは同じ調査の中で、精神科の急性病棟に働く看護師さんの内「給料」に満足しているのは22.2%、「看護業務」に満足しているのは14.1%であることを明らかにしました。
精神科の他の病棟を合わせた全体の満足度を見ても、おおよそ20%前後の値にとどまっているのです。
給料の面においても、看護業務そのものにおいても、満足している看護師さんは少ないですよね。どうしてでしょうか。
(参考:精神科における看護師のストレス及び職務満足度, 精神的健康度、布川智恵、稲谷ふみ枝、Kurume University Psychological Research 2012、No.11)
調査では直接触れてはいませんが、他の職業よりストレスを受けやすい精神科ならではの特徴が、強く影響しているということができます。
精神科の看護師さんが受けている待遇は、他の科の看護師さんに比べて同じ程度かむしろ良い場合も多いので、その分、ストレスも大きいんだと察することができるのです。
以上、一通りお話したように、精神科の看護師さんが抱えるストレスは、他の科や職業に比べて「大きい」ので、普段からしっかりとストレス解消や対策を考えつつ働く必要があります。
それでは、まず、このストレスについてきちんと理解するために、どんな理由からストレスが生じるかをお話してみたいと思います。
精神科の職場でストレスが生まれる理由とは?原因の徹底分析
病院側が抱える問題
ここでは主に、働く職場としての病院がストレスの原因になるケースについてみてみたいと思います。
スタッフの数が少ない場合
看護師さんやお医者さんの数が足りず、スタッフ一人当たりに受け持つ患者さんの数が多くなる場合、様々なトラブルに発展する恐れがあります。
当然、患者さんにとっても満足のいくケアが回ってこないことが多く、お互いにフラストレーションがたまっていく状況が発生するかもしれませんね。
病院側は適切なスタッフの数を配置すると思いますが、スタッフの数が明らかに少なく、仕事の負担が重いと思った時には、他の職場への転職などを考えることも、場合によっては必要になるかもしれません。
スタッフ同士の人間関係が良くない場合
第1章でも紹介したように、これはストレスを受けるもっとも大きい要因の一つです。
精神科のケアの中には、必ず数人で対応するようにマニュアル化されたものが多くあるので、チームワークが非常に大事で、看護師さん同士で情報交換しつつケアに当たることが多々あろうかと思うんです。
なので、スタッフ同士の関係が良好でないと、きちんとしたケアがしにくく、スタッフ―患者の関係の中で空回りしてしまうこともあり得ます。
給料・手当などが少ない、足りない場合
仕事にそそぐエネルギーに比べてその報酬が少ないと感じた場合、それはストレスになると思います。
調査で分かったように、給料に対する満足度は基本的に高くはありません。
しかしここではさらに、他の病院に比べても低かったり、残業・危険手当などがきちんと支払われていない場合などのケースを考えることができます。
マニュアルやシステムなどが不備な場合
給料の問題と同様、病院のシステムとして不備がある場合があります。
例えば、
- 基本的な状況に対応するためのマニュアルがないか、状況的に守れないことが多い
- スタッフ数の不足と重なって、必ず複数で対応すべき状況に上手く対応し切れない
このような問題が続くと、ストレスが高まることはもちろん、事故などにつながる可能性もあります。
患者さんとのやり取りでの問題
ここでは、患者さんとのやり取りの中で受けやすいストレスについて、見ていきたいと思います。
患者さんと上手く関係作りができない場合
第1章でも紹介したように、患者さんとの関係は精神科の看護師さんがストレスを感じるもっとも大きい理由の一つです。
患者さんとの信頼関係をもとに、コミュニケーションをとってケアをしていくべきなのに、それができないということはなかなかストレスフルな状況だと思います。
特に、患者さんから被害妄想の対象にされたり、思い込みを持たれたりすると、とても大変ですよね。
患者さんによる、精神科看護師への暴力問題
患者さんが看護師さんや医療スタッフに暴力を振るうのは、実に様々なケースがあるといわれています。
激しい被害妄想の結果だったり、突発的な状況からだったり。
一瞬の出来事でも、看護師さんが負うダメージは大きく、その後のケアにどうしても難しさが出てしまうので、とてもストレスな状況です。
患者さんによる暴力問題に関しては、詳しくまとめた記事がありますので、ぜひ読んでいただければと思います。
【精神科看護師への暴力の実態】知っておきたい暴力のリスクと対処法
患者さんによる、精神科看護師への陽性転移問題(強く執着されたり異常な恋愛感情を持たれたりすること)
患者さんへのケアが進むにつれ、患者さんから好意を持たれるケースが多々あると言われています。
もちろん、患者さんに心を開いていただけるのは良いことですが、ケアとしての優しさを恋愛感情として受け取られ、執着されてしまうことで、関係があいまいになったりケアが進まなくなると大変ですよね。
このケースは一概に言うことはできませんが、多くの場合ストレスな状況になりやすいでしょう。
看護師さん自らの問題
ストレスな状況を作ってしまう原因が、案外自分自身の中にある場合もあると思います。
ここではそのようなケースについて、少し具体的に見てみたいと思います。
コミュニケーション・人間関係作りが苦手な場合
患者さんと関係づくりをしたり、コミュニケーションを取ったりする時に、患者さんからは、普段健康な方との関係で期待できるような配慮やキャッチボールのやり取りは、期待しにくいかもしれません。
それも患者さんの症状によってまちまちでしょう。
そんな中でも関係性を作り出し、リードしていくことがケアとして必要な場面が多くあると思いますので、シャイだったり内向的だったりするとなかなかその作業がストレスかもしれません。
なかなか断ち切れない・割り切れない場合
患者さんが抱える症状にもよりますが、健全な関係を保つためには、時には毅然とした態度で接することも必要と思われます。
しかしそれは人によってはなかなか難しいことかもしれません。
はっきり線を引くことについて、自分を冷たいとせめてしまったり、あるいはその線が引けず患者さんに振り回されたりするとストレスを感じるようになると思います。
今の仕事に満足していない・モチベーションが上がらない場合
精神科は、内科など他の科に比べて、患者さんの経過が見えにくい特徴があります。
なので、「この患者さん治ってきた、良くなってきた」といった達成感が、他の科と同じような感覚では得にくいかもしれません。
経過がすぐにわかりづらいことで焦りを感じたり、物足りなさを感じるようになると、それがストレスに発展することもあると思います。
なかなか自信が持てない場合
自分の内側の問題や患者さんとのやり取りなどを総合的に考えて、自分自身が行っているケアや看護に自信を持てなくなると、それはだんだんストレスの要因になっていくでしょう。
特に、人と人、という関係性の下で行われるケアな分、状況が思い通りにいかなくなることのほうが多いと思います。
精神科看護師に向いている人、向いてない人
求められる人物像
それでは、どんな方が精神科で働くにより向いているのでしょうか。
以下のような方々ということができると思います。
①人とコミュニケーションを取るのが得意(好き)な方
患者さんとの関係づくりを積極的にしていかなければならない立場上、「コミュニケーション能力」はぜひあったほうが良いと思います。
患者さんへのケアの多くの部分を担う、重要な項目です。
②「割り切る・切り替える」ことが上手な方
真摯に患者さんと向き合いつつも、患者さんの気持ちに引っ張られてしまったり、巻き込まれたりせずに毅然と立ち振る舞うことが、精神科に務める上で特に求められる重要な項目だと思います。
このような性格がイメージとして「明るい・活発」といった形で表現されていることもあるかもしれません。
③忍耐強い方
患者さんは、必ずしも病院側の願うペースで回復していくとは限らないと思います。
患者さん一人ひとりのペースに合わせた看護を行っていく時は、がむしゃらに頑張ることよりも、忍耐強く付き合っていくことが、より多く求められるでしょう。
もちろん多くの精神科看護師さんが患者さんの回復のために努力されていることは間違いありませんが、その方向性は普段イメージする「頑張る」こととは少し違うかもしれません。
関係性のストレスの中で「自分」をしっかり持つことができる人
「割り切る・切り替える」ことが上手な方、と強調されても、いきなりそれができるわけではないと思います。
なので、普段から回りとの調和を図りつつも、「私は私、僕は僕」とはっきり自分をもっている方が、精神科看護師により向いていると言えるかもしれません。
精神科のストレスのほとんどが患者さんとの人間関係、あるいは職場内の人間関係から生じることを考えると、単純に割り切るばかりでは、むしろ裏目に出ることもあり得るでしょう。
自分の中に図太い芯を持って、それを中心に毎日を生きる方のほうが、精神科の看護師により向いていると言えると思います。
病棟ごとに求められるタイプ
精神科急性期病棟
精神状態が悪化した急性期の患者さんが主に入院し、集中的に治療を受ける病棟です。
全患者さんの8割以上が3か月の内に入退院して入れ替わるので、症状が重い方の患者さんが頻繁に出入りする特徴があります。
急性期病棟では薬物療法などを積極的に用いて、目に見える回復の効果を出し、結果できるだけ早く退院できるようにする病棟なので、むしろ患者さんと長期的にじっくり関係づくりができない、という特徴があります。
従って、
- 切り替えが早く新しい環境にすぐ慣れやすい方
- 結果を出していくことに喜びを感じる方
- 初めての人とコミュニケーションを取ることや人間関係を作ることが得意な方
- ある程度体力面にも自信がある方
がより向いていると思います。
(参考:精神科医療情報総合サイトe-らぽ~る、精神科救急・急性期医療の現状と展望)
精神科療養病棟
主に長期的な治療や療養が必要な患者さんが入院される病棟です。
長いスパンで回復への道のりを設計し、患者さんを治療・ケアしていく病棟です。
急性期病棟に比べて結果が目に見えにくく、地道な対応が求められることが多いです。
その分残業などは少ない傾向にあると言えます。
なので、以下のような方がより向いていると言えます。
- プライベートも充実させつつスキルアップしたい方
- 認定看護師の資格取得などに向けた時間を作りたい方
- 急性期のあとの看護を勉強したい方
- 大変な面も含めて、患者一人一人とじっくり向き合う看護がしたい方
- お年寄りの方と接するのが好き方
- 小さな変化に気付くきめ細やかさや観察力がある方
(参考:看護師転職サイトランキング.jp)
これだけは避けるべき ― あまり向かないタイプ
①患者さんの妄想に入り込みすぎたり、感情を入れ込みすぎたりしないこと
患者さんの妄想に入り込みすぎたり、感情を入れ込みすぎたりして、看護師さん自身が病を得てしまうケースが実は少なくないと言われています。
もちろん患者さんのために尽くして働くことが看護師さんの使命ではありますが、何も自分自身が潰れてまで働くべきではありませんし、実際そういう状態では看護師というお仕事が務まらないと思います。
②限界と感じているのに我慢しながら仕事しないこと
精神科看護師として働き始めて1年で、すでに患者さんに対して怖さを感じたり、苦手意識を強く持ってしまったりして自信を無くした場合、速やかに転科・転職することを薦めるケースが多々あるようです。
何も限界まで我慢して耐えながらすべき仕事ではありません。
周りの同僚や先輩と良く相談し、常にコミュニケーションを取りつつ、働くリスクの大きさを客観的に判断することが、最も大事だと考えます。
精神科看護師の仕事のノウハウ ー ストレスとの上手い付き合い方
これまで、精神科の看護師さんが抱えるストレスのタイプや原因などについて一通り見てきました。
もちろん、これらのストレスをすべて避けられるならそれに越したことはありませんが、現実はそう行きません。
患者さんがいらっしゃる限り、また仲間とみんなで働き続ける限り、なんらかのストレスはつきものかもしれませんね。
それでは、どうすれば、このストレスと上手く付き合い、解消していくことができるのでしょうか。
この章では、ストレスへの対処法及び解消法について、少々具体的にお話ししてみたいと思います。
ストレスを溜めない働き方のコツ
第1章で紹介した岩手大学チームの研究報告で、斉藤亜希子先生は、実際に現場で働く看護師さんを相手に、書面や直接聞き取りのインタビュー調査を行っています。
ここではその返答に基づいて、日々のストレス対処法を紹介します。
日々のストレスを溜めることなく、言いたいことはその場で言う
もちろん言葉を選ぶ必要はありますが、その日のストレスを次の日に持ち越さないことが重要です。
ストレスを感じた時は明確にその理由が分かっていても、一旦家に持ち帰ってしまったり、時間が過ぎてしまうと、もやもやした感情や負荷だけが残ってしまって、問題の解決からは遠ざかってしまう恐れがあります。
問題や違和感を感じたらできるだけその日のうちにすっきりしましょう。
仕事とプライベートのバランスをしっかり保つ
仕事をしている以外の時間は、仕事のことを意識的に忘れたりするなど、気持ちの切り替えを上手に行うことが大事です。
そのためには、単純に忘れるためだけに頑張るのではなく、プライベートで夢中になれる趣味を見つけることも良い方法かもしれませんね。
働く時間と休む時間に合わせて頭も上手く切り替えるのが常に必要な作業です。
職場の同僚・仲間と仲良く親しい関係になる
今までお話したように、職場での人間関係はストレスのもっとも大きい源の一つであるのが事実です。
それは逆に言うと、職場の人間関係が良くなるとかなりのストレス問題が解決することを意味します。
実際、「職場の人間関係」でストレスを感じると答えた看護師さんたちは、ほぼ同時に「職場の同僚や仲間からのサポートを力にストレスを解消した」とも答えています。
職場の人間関係は、もちろんストレスの原因でもありますが、場合によってはもっとも強力な味方にもなることを、ぜひ覚えてください。
いざ問題があったときは
いざストレスを抱えてしまったり、働くことがつらくなった時は、どのように対処すればよいでしょうか。
いくつかの方法や実践例を紹介します。
心のもやもやを具体化すること
まずは、自分が何でストレスを受け、何を悩むのかを明確にする必要があります。
じっくり時間をかけて、自分と向き合いつつ、もやもやした気持ちを日記に書いたり、あるいは友人や信頼できる仲間に聞いてもらうなどして、言葉に起こしてみたらどうでしょうか。
ぜひ今改善したい点と、もう見切りをつけるべき点、そしてもう少し様子を見るべき点に整理できれば、少しはすっきりすることができるかもしれません。
同僚・仲間・チームのメンバーに相談すること
整理した気持ちは、ぜひ、そのままにせずに、職場のみなさんに聞いていただきましょう。
実際に多くの精神科病院の職場では、このような悩み相談や愚痴を聞いてもらうための場を設けていることがあります。
もしそのような場がなくても、信頼できる同僚を中心に、あなたの気持ちを聞いてもらってください。
現場で働くあなたの気持ちが晴れて健康的な精神状態になることが、職場の医療環境にも絶対に有益であることを、ぜひ忘れないでください。
ストレスを解消するための様々な方法
先ほど紹介した岩手大学チームの研究では、看護師さんのストレスが発展してバーンアウト・燃え尽き症候群になることを防ぐために、以下のようなアドバイスをしています。
ここに紹介しますので、ぜひ参考にしてみてください。
- 経験や感覚で「患者さんとのほどよい距離」を保ってかかわる
- 正しい患者さんのイメージ(患者像)を持つ
- 職場の上司や先輩・スタッフといつでもサポートしあえる、組織の関係性を作っておく
- 精神科看護師として働く意味や目的感を含めたコミットメントを持ち、同僚や仲間で意識を共有する
- 職場内での正当な評価や研修などを導入し、存在価値を実感できるようにする
※ コミットメント:責任を持った約束・公約・確約、または責任を持つ関わり
(参考:精神科に勤務する看護師のバーンアウト予防に向けたストレス対処に関する研究、斉藤亜希子、岩手大学大学院人文社会科学研究科紀要22、2013年6月)
現場の実例・実践
- 定期的に参加する(病院外の)研修会を持つ
聞き取りインタビューに答えたEさん(年齢・経歴不明)は、定期的に参加している研修会があるそうです。
その研修会でのグループワークなどを通して、参加者どうして自由に、精神科での働き方などについて語り合う時間を持つと言っています。
普段の職場の雰囲気とは違う顔ぶれの中で、新鮮な意見を取り入れよう、といった意図と考えられますね。
- 研修会や学会の交流会に常に出席する
同じくインタビューに応じたFさん(年齢・経歴不明)は、参加した学会や研修会があると、特別な用事がない限りは交流会まで残るそうです。
普段だとめったに会えないような人と知り合いになれるかもしれないので、それを重要視しているとのことです。
この場合もEさんと同じく、新鮮な顔ぶれや新鮮な意見を求めているケース、と考えることができます。
(参考:精神科に勤務する看護師のバーンアウト予防に向けたストレス対処に関する研究、斉藤亜希子、岩手大学大学院人文社会科学研究科紀要22、2013年6月)
これら二つの事例は、同じような悩みを抱える人同士の交流を重要視している点に加え、「普段取り組んでいる問題を、普段とは違う目線から見つめたい」という意欲があるという点で、共通していることがわかります。
いろんな目線を借りて、自分の現状と向き合い、今抱えるストレスや問題を次へのステップアップとして用いることこそ、最も上手い「ストレスとの付き合い方」かもしれませんね。
精神科看護師が明るく元気いっぱいに活躍できるために
この章では、多くのストレスを抱えながらもなお働き続ける、精神科の看護師さんの活躍の意味について、もう一度考えてみようと思います。
精神科看護師だからこそできる医療とケア
最初に触れましたが、精神科看護師さんのおおよそ7割がストレスを抱えています。
しかし、それと同じくびっくりなのは、今この国の人々のうち54.2%が、「ストレスを抱えている」と答えているところです。
2人に1人は精神的に不健康で、それを自らも強く認識しているということですね。
もちろん、軽いストレスならだれもが抱えることですし、人それぞれに処理するノウハウがあるのかもしれません。
しかし果たしてそれだけでしょうか。
例えば、今現在、全国で、過去1年間でうつになったのは30人に1人、生涯でうつになるのは15人に1人と言われています。
つまり誰もがうつになり得るし、そのリスクを負っているのですが、決して自分1人で元気になれるわけではありません。
(参考:メンタルナビ)
中にはいまだに精神論などで片づけている人もいるかもしれませんが、今でも多くの方々が精神科の医療やケアに支えられて、元気を取り戻し、社会に復帰していることを、忘れてはなりません。
うつになること自体は、もちろん幸せなことではありません。
しかし、もし自分がそうなってしまったとしても、きちんと助かるという安心感のもとで生活できるのは、精神科医療の最前線で頑張る、看護師さんはじめ医療関係者のみなさんがいらっしゃるおかげなんです。
精神科の看護師さんに助かっている人たち
精神科に入院される患者さんは、当然、精神的な病をもっておられる方々です。
今はだいぶ変わっては来ましたが、いまだにこのような方々に対して、目線や認識などに素直じゃない部分があることは、否めない事実だと思います。
きっと、病そのものと同様に、それによってご自分の人格を傷つけられたりすることもまた、大きな苦しみを覚えるのではないかと思います。
本当は体の病気と同様に、適切な医療とケアによってきちんと回復して社会に復帰できるものですし、実際多くの方々が助かっています。
しかし精神科の医療は、病気の治療だけではなく、患者さんが偏見や誤解なしに人格を認めてもらえる場所でもあります。
本来は社会の全体において、偏見のない対応が当たり前に行われるべきですが、まだその理解と成熟度がいきわたっていない部分がたくさんあり、病そのもの以上に痛みと傷が生じています。
そこに癒しを与えることもまた、精神科医療の役割の一つだと思います。
これからの社会がますます頼ってくる精神科看護師の力
実はこの記事を書いている私の友達の中にも、少しの間精神科の医療にお世話になった人がいます。
症状としてうつになる寸前のような段階だったようで、数か月程度の治療で元気を取り戻していくのを隣で見させていただきました。
このように、精神科の医療に触れることが、そんなに珍しいことではなくなってきたことを実感しています。
これからの社会はますますストレスが増加し、精神科の医療を必要とする人もどんどん増えると思います。
社会にストレスが増えていくことは決してうれしいことではありませんが、その分「心の病気」についてきちんと理解し、向き合う機会が増えることは、むしろ良いことかもしれません。
これからの時代において、精神科で働く看護師さんの活躍はますます期待されると思います。
おわりに
今回は、精神科の看護師さんが抱えるストレスについて、そのタイプや原因、そして対処法を中心にお話ししました。
いかがでしょうか。
これから精神科で看護師として働こうとしている方も、もうすでに活躍している方も、普段から付きまとうストレスに上手く対処していただき、私たちの社会をもっと明るく元気にしていただくことに大きく貢献していただけることを、心から期待し願います。
精神科看護師の求人数ランキング
参考までに下記は主な転職サイトの精神科 看護師の求人数ランキングになります。(2024年11月時点)
順位 | 転職サイト名 | 求人数 |
---|---|---|
1位 | 看護のお仕事 | 4,756件 |
2位 | 医療ワーカー | 3,930件 |
3位 | マイナビ看護師 | 1,817件 |