療養型病院で働く事に興味のお持ちの看護師さん、「療養型病院」のどんなイメージをお持ちですか?
ゆったり働けそう、患者さんとじっくり関われそう、などそれぞれの印象をお持ちかと思います。
でも、実際の内部事情は働いてみないとわかりませんよね。
今回は、実際に働いている方の体験談を元に、本当はどんな職場なのか、やりがいや悩み、療養型で働く上での向き不向きをご紹介しますので、療養型病院が気になっている方は自分に当てはめて働いている姿を想像してみて下さいね。
記事を読んで自分に向いていそうだと感じた方は、療養型病院への転職活動にぜひこの記事を活かして頂けたらと思います。
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療養型病院とは
【療養型病院とは、主な病床(ベッド)が療養病床である病院の通称である】
- 急性期治療を終え、長期にわたり療養を必要とする患者のための病床
- 病床面積や談話室の設備が必須であり、医師・看護師などの人員配置人数も医療法施行規則により定められている
療養病床には、次の2つがあります。
国は将来この2つを統合させる事を目指しています。
①医療療養型病床
【慢性期の状態にあって入院医療を必要とする患者に対するサービスを「医療保険」で提供する病床】
- 自立または未要介護認定者が多く、介護療養型よりも多くの複雑な医療処置患者を受け入れている
- 看護業務、介護業務どちらも行う場合が多い
②介護療養型病床
【要介護認定された患者に対するサービスを「介護保険」で提供する病床。必要に応じて医療も受けられる】
- 厚生労働省による廃止の方針があったが入居者の受け入れ先が見つからないなどの問題のため、今後、「療養機能強化型医療施設(仮称)」と他の介護療養型医療施設に分けて存続するという新たな改定案が出されている
(参考:みんなの介護)
- 痴呆症状を呈している患者が多い
- 医療処置患者の受け入れ状況では、人工呼吸器装着患者や透析患者は皆無
- 介護士の配置基準も定められており、看護職は介護職との明確な業務区分ができている所が多い
【一般病床とのスタッフの違い】
- 医師と看護師の配置基準が、一般病床よりも療養型病床の方が少なくなる
- その代わりに、一般病床では配置規定のない「看護補助者」の配置(医療療養病床)や介護士が必要
一般病床 | 医療療養病床 | 介護療養病床 | |
100床当たりの 人員配置例 | 医師 6.25人 看護師 34人 | 医師 3人 看護師 20人 看護補助員 20人 | 医師 3人 看護師 18人 介護士 18人 |
配置基準 | 看護師3:1 | 看護師4:1 看護補助員4:1 | 看護師6:1 介護士6:1 |
(参考:高齢者住宅仲介センター)
*看護補助者とは?
引用:公益財団法人 慈愛会
看護師資格は持たないが、医療の現場で、看護師のサポートをする人。患者様の身の回りのお世話(食事介助、入浴介助、ベッドメーキングなど)、検査への誘導、メッセンジャー業務(検査物を回収後検査室へ運搬、カルテの回収、運搬)、事務作業を行う。
- スタッフの役割も、治療が中心となる一般病床では医師が主役となるが、療養型病床では、療養が中心となるため、看護師や看護補助者、介護士が主役となる
(参考:みんなの介護)
(参考:医療法人社団 回心会 回心堂 第二病院)
【設備や機材の違い】
一般病床 |
|
療養病床 |
|
(参考:小原病院)
療養型病院の看護師の役割
療養型病院の患者さんは急性期治療を終え、病状は安定している方がほとんどです。
その代わり、寝たきりの方、口がきけない方、認知症の方など、自分の考えや意見をうまく伝えられない患者さんも多くいらっしゃいます。
治療の場、というよりは長い療養生活を送る「生活の場」でもあります。
「長い療養生活による身体的、心理的な苦痛を伴わない、豊かな生活できるよう援助する」のが看護師の役割となります。
- 医師、介護補助員、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士等との連携を密にし、患者さん一人一人に合わせたケアプランを作成する
- 患者さんとその家族とのコミュニケーション、連携を図り本人、家族の希望に対応していく
このように、患者さんとその周りを繋げる連携役となり、患者さんの生活の質を守りながら療養が行える環境を整えていきます。
(参考:荻原みさき病院)
療養型病院の看護師の仕事内容と体験談
仕事内容
患者さんの病状は急性期治療が終了しているため安定しています。
日々の小さな変化を見逃さないよう、患者さんの体調をチェックし、報告、変化があれば指示に基づき処置をする、というのが主な業務です。
【仕事内容】
- 申し送り
- バイタルチェック、検温、処置、経管栄養のケア
- ドクターへの報告、指示受け、処置
- 患者様の昼食の準備、食事介助、与薬等
- 注射・点滴・採血
特徴的なのは
- 食事が口から取れなくなった患者さんも多いため経管栄養の処置がある(経鼻栄養法、胃ろう)
- 寝たきりの患者さんも多いため、褥瘡の処置が日常である
- たんの吸引等の他、オムツ交換、入浴介助、食事介助等も担当する
- 患者様の身の回りのケア、気分転換のためのおやつ介助、レクレーションがある
など、高齢者の介護に近い業務や、長く病院で療養する方の生活の質を向上させるためレクレーションの取組も行います。
(参考:回心堂 第二病院)
【医療処置の内容と割合】
(参考:みんなの介護)
体験談から見るやりがいや良かったこと
療養型病院で実際に働く看護師さんの体験談をまとめました。
【やりがいや良かったこと】
- 患者さんと長く関わるため信頼関係が築ける
- 患者さんの状態に合わせた看護が良い方向に進んだ時に喜びを感じる
- 急変時以外はゆったりしていて残業も少ない傾向がある
患者さまと深い信頼関係が築けることと、私たち看護師が担う役割が大きいことです。特に療養型の病院では、患者さまの日々の状態は看護師がもっともよく理解し把握しています。
引用:ナースではたらこ
患者さまの状態に合わせて看護計画を変更したり、日々の観察によって急変を事前に察知したり、またドクターに適切なアドバイスをすることが求められます。その結果、患者さまの状態がよくなったときにはやりがいを感じます。
早急な処置を求められるような事態はないし、ほとんどルーティンワークなので残業もありません。なにもなければゆったりできます。ただし、なにもなければです。
引用:看護師お悩み相談室
体験談から見る大変なことや悩み
【大変なことや悩み】
- 急性期などの緊急性が頻繁にある職場から移動した場合、最初はギャップがあり物足りなく感じる事もある
- 業務がルーティンワークに感じられ、やりがいを見いだせない場合がある
- 緊急入院や手術が少ないのでゆったり見えるが、オムツ交換や入浴介助、たん吸引、経管栄養の数が多く、療養型ならではの忙しさがある
- 看護師の人数が一般病床より少ないため受け持ちも多い
今までは同じ病院の中の急性期にいたんですけど、人間関係がイヤで異動しました。自分から異動したのに、療養型はゆっくりしてもの足りなくて、なのに、まわりの看護師たちは忙しいと言っています。
引用:看護師お悩み相談室
今の病棟は経管を流す滴下も早いし、モニターのアラームが鳴っても見に行くのが遅くて、責任感や危機感に欠けています。ここでは私のしたい看護ができません。
療養型は看護師の配置が少なく、日勤は2~3人だったり、受け持ちも10人から15人とか多いですよ。
引用:看護師お悩み相談室
緊急入院や手術がないので、ゆったり見えますが、朝のオムツ交換、清拭、入浴介助の大変さは一般病棟の比ではありません。
口腔ケアや経管栄養の数も大変です。ケアが悪いと次から次へと褥瘡できるし、ひっきりなしの吸引、一般病棟は年末年始ガラガラなのに、療養はいつもと変わらず・・。
毎日同じことの繰り返しであまり学ぶことも少なくて。
療養型病院の看護師【向き不向き】
【向いている人】
- 患者さんの小さな変化を見逃さないよう一人ひとりに寄り添った看護をしようと思える人
- ルーティンワークに思いがちな日々の中にも自分から看護の意味、やりがいを見出し、向上心を忘れず働ける人
- 患者さんやそのご家族、医師、看護補助員、理学療法士、作業療法士などとコミュニケーションがきちんととれる人
- 体力に自信がある人
療養型病院では急性期のように日々ばたばた、緊迫した状況が頻繁に起こるわけではないため、業務が同じことの繰り返し・・・、と感じる方もいらっしゃるようです。その中でも、うまく気持ちを伝えられない患者さんの顔色や体調の少しの変化を見逃さず、その人に合った看護を見出していくのも看護師の役割です。また、入浴介助やおむつ交換は腰の負担や体力を使います。
【向いていない人】
- 療養型は忙しくないから楽そうで転職したいという人
- 介護に近い業務が多いのは苦痛に感じる人
- 緊急性や緊迫した場面、医療処置を行う場面の方がやりがいを感じられる人
- 1人の患者さんにじっくり長期間関わる、他部署との連携などが苦手な人
急性期から移動した看護師さんは日々同じような業務にギャップを感じ、やりがいが見いだせないという方もいらっしゃいます。また、ゆったり、楽そうだから、という理由で療養型病院を希望した方は、オムツ交換、入浴介助の大変さ、ひっきりなしのたん吸引など療養型特有のやることの多さ、そういった介護に近い業務での忙しさに抵抗を感じる場合もあります。
療養型病院の看護師の求人傾向
給料について
- 基本給20万前後+各種手当+賞与
一般病床と同じ位の金額です。
夜間の看護師の配置も義務付けられており、夜勤もあります。
(参考:医療法人社団 健老会 介護老人保健施設 姉ヶ崎ケアセンター)
求人数について
看護師転職サイトを利用し、「正看護師 全体」の求人数と「療養型病院 正看護師」の求人数を比較してみました。
その結果、
- 求人数は正看護師全体の求人数に対して6.2%と1割にも満たず、非常に少ない
という事がわかりました。
理由として、看護師の配置基準が一般病床よりも少ないため募集する看護師数も少なくなるということがあげられます。
効率的な求人検索方法
先に述べたように療養型病院の看護師求人数は非常に少ないため、求人を探すには時間と労力がかかる事が予想されます。
そんな時におすすめなのが看護師の求人に特化した「看護師転職サイト」の利用です。
会員登録をすればプロのキャリアコンサルトによる看護師の転職に関する様々なサポートを無料で受けることが出来る、看護師の求人に特化した人材紹介のサービスです。求人検索の利用だけでなく、相談する事で病院の情報を得ることが出来ます。
- 「療養型病院でこんな風に働きたい」という相談をすることができ、自分に合った施設を紹介してくれる
- 検索条件を細かく絞り込むことが簡単に出来、自分の希望する施設を見つけやすくなる
- 気になる病院があった場合、忙しい自分に変わりプロの転職カウンセラーが職場の雰囲気、忙しさ、希望の給料額の交渉などの「気になるけど聞きづらい事」を確認し、転職のサポートをしてくれる
- 応募が殺到するためにあえて非公開にしている非公開求人情報も知ることが出来る
- 面接対策や履歴書の添削、入職後の悩みをサポートしてくれる
- 病院見学に同行してくれる場合がある
*看護師転職サイトの便利な点は、下記のように求人検索の際に細かい設定が簡単に出来る事です。(サイトにより絞り込み設定は変わる)
(参考:ナースフル)
【転職サイト】療養型病院の求人数ランキング(2024年9月時点)
順位 | 転職サイト名 | 求人数 |
---|---|---|
1位 | 看護のお仕事 | 30,706件 |
2位 | 医療ワーカー | 2,219件 |
3位 | マイナビ看護師 | 1,186件 |
4位 | MCナースネット | 340件 |
療養型病院看護師の病院選びのチェックポイント
働いてから「こんなはずじゃなかった」と後悔しないように、希望の病院の情報は自分でも集め、じっくり検討しましょう。
調べてもわからない事や気になる事は、看護師転職サイトの担当カウンセラーに確認してもらう事も出来ます。
【①病院の形態・配属先の確認】
- 医療療養病床or介護療養病床?
療養型病床には2つの種類があり、看護師の人数やそれぞれの特徴があります。
- 医療療養病床は介護療養病床よりも多くの複雑な医療処置患者を受け入れている
- 介護療養病床は新しい制度に移行する予定があるetc…
特徴は把握しておき、面接時にいかしたり、質問したい事を先にまとめておきましょう。
自分がその病院に合いそうかイメージも付きやすくなるでしょう。
また、ケアミックス型(急性期病棟・回復期病棟・療養病棟と複数の機能をもった病棟)や病棟全体での募集もあるため、面接時に希望は療養型である事や、その希望は通るのか確認しておくと良いでしょう。
思っていたイメージと違うとギャップで悩むことになってしまいます。
私が今働いている病棟は、区分的には医療保険適応の医療療養型病棟なのですが、40人いる患者のうち人工呼吸器をつけている患者が8人、IVHの患者が11人居ます。CTやMRIもルーチンでとっており、採血や痰培、輸血もします。
引用:看護師お悩み相談室
癌の疼痛緩和のためにシリンジポンプで麻薬の持続点滴を行っている人が2人。ステルベンも多く、最短で入院して2日で亡くなられた方もいたりして患者の出入りも激しい感じがします。
療養型病棟ってもっとゆっくりしたイメージがあったのですが、どこもこういうものなのでしょうか?病棟勤務経験がほとんどなかったので療養型を希望したんですが、正直その日の業務についてくだけで精一杯で、疲れました。
(参考:医療法人社団育正会 看護部)
【②仕事内容の詳細】
- 看護業務のみか、介護業務もあるのか事前に確認
求人には明確に看護業務のみ、介護業務もあり、などの記載はありません。
ですが、入職してから実は介護業務の割合が多い、といった不満が生まれる場合があります。
入職前に必ずどのくらい介護業務はあるのか確認し、納得した上で働きましょう。
私は准看のときにバイトで他院の療養病棟にいたのですが、そこでは与薬、バイタル測定、記録など看護師業務が主でした。
引用:看護師お悩み相談室
今の所は、介護士が少ないせいか、日勤で看護師なのに介護業務(介護士の仕事を一日してる)がシフトで組み込まれていること、風呂介助が週2日、看護師業務が週2日程度、後はシーツ交換一日中。どこの療養病棟もこんな感じですか?
今日は仕事が介護業務だったのですが、今度はアクティビティ(午後介護士が主体で患者とカレンダー作ったり、体操したりする)の司会進行をしてくださいと言われ、自分の資格の意味がわからなくなりました。
【③急変時の対応】
- 夜勤時の急変患者に普段どのように対応しているか把握しておく
療養型の夜勤は看護師の人数が少なく、1人で夜勤、という事もあるようです。
急変時の判断はまず看護師がするため、プレッシャーが伴います。
- 入院時にご家族と看取りに関する希望を聞いておき、延命処置を望む場合は治療する
- 極力無理な延命処置はしない
- 少しでも変化があればすぐ当直医に連絡して良い
など、病院による決め事を確認しておきましょう。
そして、自分も夜勤中に急変対応をする日が来る、とう事は念頭に置きましょう。
今日、夜勤中失敗してしまいました。
引用:看護師お悩み相談室
療養型の病院に勤めているのですが、患者さんの変化に気づいたのは入りの時点です。その時点では一刻を争う状況か判断がつかなかったので、一晩様子をみようと思いました。
ラウンド中は大きく変化はなかったのですが、仮眠時間をあけて検温に行くと入りの時点より明らかに悪化していました。
この時点で当直医に上申した所で療養型の病院だし、何の治療も検査もできません。
常勤医の出勤を待っての報告でと判断したのですが、なぜすぐに報告しなかったのかとすごく怒られました。今思えば報告だけはしとくべきだったと反省しています。
【③お金や休暇について】
- 年間休日数
- 退職金や福利厚生
- 賞与の回数や金額
- 夜勤手当の金額や回数
【④病院の雰囲気の確認】
- 病院見学の有無
- ホームページで理念や施設内の様子を確認
- ブランクあり・未経験者に対する受け入れ姿勢
(参考:https://job.mynavi.jp/17/pc/)
(参考:コメディカルドットコム看護師)
まとめ
療養型病院というと、どうしても「ゆったりと仕事が出来そう」と考えてしまいがちですが、実際に働く方の声を聞くとそうとばかりは言えないようです。
入浴介助やオムツ交換、たん吸引などの今までと違った部分での業務は多く、体力も使う職場だという事がわかりました。
「楽そうだからやってみたい」という考えでは、現実とのギャップを乗り越えられないかもしれません。
入職前にしっかりと、どんな病院なのか、どんな業務を任されるのか確認して、納得した上で応募してくださいね。
まずは自分が療養型病院で働いていけるか、この記事を参考にもう一度考え、気持ちをまとめて頂けたらと思います。