「認定看護師になったら、本当に給料は上がるの?」
そんな不安や不満を感じていませんか?
現状では、認定看護師の仕事が正当に評価され給料に反映されているとは言いにくいでしょう。
しかし、認定看護師としてやりがいや向上心を持って働くことはできます。
そのためには、「認定看護師とは給料を上げるためになるのではない」ということを知っておく必要があります。
ここでは、認定看護師になる前に一度は考えて欲しい問題や、認定看護師として働く上で知っておくべき給料の実態を取り上げています。
また、あなたらしく働くためのヒントも紹介しています。
これを読めば、あなたが認定看護師として働く理由や目的、そしてあなたに合った働き方がきっと見えてくるはずです。
認定看護師になるのは給料を上げるためではない
認定看護師になる理由
認定看護師を目指すきっかけ
認定看護師を目指すきっかけは、大きく2つあります。
- 毎日の看護の中で、不安や力不足を感じる出来事があった
- 患者さんのために、もっと自分にできることがあるのではないかと考えたことがある
つまり、看護の知識や技術を高め、それを患者さんのために役立てたいという気持ちで認定看護師を目指しています。
認定看護師は現場のプロフェッショナル
認定看護師以外にもスキルアップする方法はあります。
認定看護師の一番の特徴は、患者さんとの距離が近く、現場での質の高い看護ケアを求められることです。
「患者さんのために」という気持ちがより強い看護師にとって、現場で看護ケアを実践できることは大きな魅力となります。
「私は認定看護師しか考えられない」というほどの強い気持ちを持って認定看護師を目指しているのです。
認定看護師になることによって得られること
高水準な看護ケアを【実践】できる
認定看護師には、「実践・指導・相談」という3つの役割が求められています。
認定看護師になることで得られる専門性の高い知識や技術によって、現場での看護ケアの幅や質が高まります。
つまり、あなたの実践する看護ケアに付加価値が付くことになるのです。
また、同じ現場で働くスタッフの見本や目標となり、チーム全体の医療への意識が高まり、より良い医療へとつながっていくのです。
看護スタッフへの【指導】ができる
認定看護師になることで、患者さんの治療について医師と対等に話し合うことができたり、質の高い看護ケアによって患者さんからの信頼を得られるようになったりと、今までとは違うやりがいや喜びを感じることができます。
それによって、周囲から一目置かれる存在となり、あなたの知識や技術、経験を看護の現場で他の看護スタッフに対して直接指導することができます。
あなたの指導は、現場の医療を底上げする大事な役割を担っています。
看護スタッフから【相談】を受けることができる
認定看護師は、患者だけでなく現場のスタッフからも厚い信頼を得ることができ、スタッフから看護ケアに関する相談を受けることもあります。
そして、その問題解決のために知識や技術をわかりやすく提供することが求められ、院内での勉強会を主催したり、研修会や学会へ参加するなど、大きな仕事を任されるケースも増えてきます。
また、部署をこえたスタッフとの連携も必要となり活躍の場が増え、常に刺激を受けながら高いモチベーションで仕事をすることができます。
認定看護師に向いていない人、向いている人
認定看護師に向いていない人は、「給料アップだけが目的の人」です。
後ほど認定看護師の給料の実態について触れますが、給料での見返りは期待できません。
給料を上げることだけが目的だとしたら、時間やお金をかけて勉強したことを後悔したり、せっかく取得した資格を無駄にしてしまうかもしれません。
逆に認定看護師に向いている人は、一言で言ってしまえば「看護に対する情熱がある人」です。
このような人たちは、給料に関係なく、認定看護師としての魅力ややりがいを自分なりに見出しているのです。
あなたも一度、認定看護師になる理由や目的を考えてみることが大切です。
自分の気持ちに自信と誇りを持つ
看護師として働く中で、もっと自分を高めたいという気持ちを持つことはとても大切です。
実際に認定看護師資格を取得するという行動に移せる人は貴重であり、このような意識の高い人材が必要とされています。
これから認定看護師を目指す人は、「認定看護師になりたい」という気持ちに自信と誇りを持ってください。
認定看護師として働く先輩方も、あなたと同じようなモチベーションで資格取得に挑み、自分の仕事にやりがいや誇りを持って働いています。
認定看護師になる前に知っておきたい実態
増え続ける認定看護師
認定看護師制度は日本看護協会によって1995年に発足し、1997年から認定審査を開始しました。
下記のグラフからもわかるように、認定看護師の数は増え続けています。
現代の医療現場には専門性の高い人材が必要とされており、それに応える意識の高い認定看護師が増えているのです。
認定看護師の給料の変化
では、認定看護師になると給料にはどのような変化があるのでしょうか。
認定看護師になっても、54.8%の人が「給与に変化がなかった」と回答しています。
また、「賃金表での昇格・昇給がないものの、手当がつく」は22%です。
その金額は3000~20000円程度とされ、平均額は9773円という結果になっています。
(参考:日本看護協会「2012年病院勤務の看護職の賃金に関する調査」)
認定看護師の給料の仕組み
看護師給料の2つの特徴
基本給の割合が低い
一般的に「看護師の給料は高い」というイメージを持たれています。
これは、同世代の他の業種の人の給与と比較した場合に言えることであり、看護師の仕事内容と比較した場合でも同じことが言えるとは限りません。
看護師の給料の特徴の1つは、所定外給与額(夜勤手当や時間外手当など)の占める割合が高いということです。
逆に言うと、給与総額の中で基本給が占める割合が低いことになります。
所定外給与額を考慮しなければ、他の業種と比較しても基本給が高いとは言えず、給与総額も飛び抜けて高いわけではありません。
また、認定看護師になると施設や働き方によっては夜勤がなくなり、給料が減るケースもあります。
給料の上昇率が低い
2つ目の特徴は、給料が上がりにくいということです。
初任給は高めであるものの、給料の上がり方は他の職業に比べても緩やかであることがわかります。
認定看護師給料の考え方
「資格」ではなく「役職」に対して給料が上がる
「資格を取得する=給料が上がる」という考えは改めた方がいいでしょう。
なぜなら、看護師の給料が大きく上がるのは、看護師という職務から昇給して「役職」がつく時だからです。
役職は病院の規模によって異なりますが、主任、看護師長、看護部長などがあります。
つまり、認定看護師は「資格」であって「役職」ではありません。
そのため、資格手当がつくケースがあるものの給料に大きな変化がないのです。
資格取得後の看護実践を期待されている
あなたに求められているのは「認定看護師という資格を取得すること」だけではなく、「その資格を活かして現場でどう看護ケアをするか」ということです。
認定看護師とは、現場で高度な知識や技術を求められるプロフェッショナルであり、それらを日々の看護ケアで実践することを期待されているのです。
先ほどの「役職」の話とも関係しますが、認定看護師として現場で働く姿が患者さんや仲間、病院に認められ、評価され、昇給につながっていくのです。
認定看護師の資格とは、キャリアアップの手段の1つであり、通過点に過ぎないということです。
給料が上がりにくい3つの理由
看護職は社会的に必要とされ、専門性の高い職業です。
また、不規則な勤務などで体力的にもハードであり、人命を預かるという精神的なプレッシャーも大きい仕事です。
それにも関わらず、なぜ給料が上がりにくいのでしょうか。
そこには病院側の事情や、医療業界の抱える問題があります。
診療報酬制度による利益の限界
病院は一般の企業とは異なり、診療報酬が主な収入源となります。
診療報酬とは、行われた医療行為に対して医療保険から支払われる報酬のことです。
さまざまな医療行為は国によって価格が定められているため、収益を大幅に上げることが難しいのです。
看護ケアの質や成果が評価されにくい
認定看護師と看護師で同じ看護ケアを行った場合でも、病院が診療報酬によって得る収益には変わりがありません。
つまり、認定看護師として高水準の看護ケアを行ったとしても、それが直接収益に結びつかないのです。
現状では、看護ケアの質や成果が評価されにくいと言えるでしょう。
認定看護師が行う高水準な看護ケアが診療報酬によって正当な評価を受けるようになることが医療業界の課題となっています。
「役職」アップは狭き門
役職が上がることによって昇給するという話をしました。
しかし、看護職は昇給のチャンスが少ない傾向にあります。
なぜなら、看護職は一部署のスタッフ数が多く、スタッフに対する役職の数が少なくなるからです。
また、役職がつく立場の人の割合がある程度固定されているため、役職がつく人の数は限られます。
認定看護師の資格を最大限に活用する2つの方法
厳しい環境の中でも、生き生きと働く認定看護師の方がいます。
それを実現している外的な要因は、病院からの「支援」と「評価」です。
向上心を持って頑張る人を支え応援してくれる「支援」や、協力的し認めてくれる「評価」は非常に大切なことです。
これによって仕事へのモチベーションが上がり、それが現場の看護に還元され、病院の医療レベルも高まるという好循環が生まれるのです。
病院の支援制度を活用する
認定看護師として働く人のために、給与以外の待遇があることを知っていますか?
病院によって支援体制は様々ですが、学費の補助や教育期間中も給料が支給されるなどのケースがあります。
支援制度があるから認定看護師になるわけではありませんが、支援があることによって資格取得への意欲や支援してくれる病院の期待に応えたいという気持ちが高まることもあります。
自分の病院の支援体制をきちんと確認し、最大限に活用しましょう。
認定看護師の資格取得にかかる費用
認定看護師の資格を取得するには、特定の教育機関の課程を修了する必要があります。
全国各地にある教育機関で、一定期間勉強をしなくてはなりません。
そのためには「時間」と「お金」がかかります。
- 時間⇒時間は6ヶ月、615時間
- 費用⇒100~200万円程度
(内訳)全員に必要な教育費用(授業料、実習費、教材費、認定審査費用など)⇒100万円程度
個別にかかるその他の費用(引越し代、家賃、宿泊費、交通費など)⇒100万円程度
教育期間中の待遇
認定看護師は、看護師として5年以上(うち3年は認定を受ける分野で)の実務実績が必要になり、ほとんどの人が看護師として働く状況で認定看護師を目指すことになります。
教育を受ける6ヶ月の間は、看護師として仕事をすることはできませんので、その期間中の待遇などがきになるのではないでしょうか。
資格取得に関する考え方や支援制度は病院によって異なりますが、教育を受けている期間中の勤務形態や待遇がどのようになるか、自分の病院の制度をきちんと確認しておく必要があります。
【勤務形態や待遇の例】
- 勤務形態⇒出張、休職、研修、退職など
- 給与の支給⇒全額支給、基本給のみ支給、一部支給、無給など
- 賞与の支給⇒全額支給、一部支給、支給なし
- その他⇒旅費の援助、入学金・授業料の援助、受験費用の援助、家賃の補助、無利子の奨学金制度など
資格取得後の支援制度
認定看護師として働くようになってからも、さまざまな活動で費用がかかることがあります。
例えば、学会や勉強会の移動費用や研究費などです。
また、認定看護師の資格は5年ごとに更新が必要になり、その際にも審査料や認定料が発生します。
資格取得後に発生するこのような費用についても支援してくれる施設があり、認定看護師の活躍をサポートしています。
奨学金の利用
病院の支援制度が十分でないと、退職しなくてはならないケースや休職扱いで無給というケースも出てくるため、個人で費用を負担しなくてはなりません。
そのような場合は、奨学金を利用するという方法もあります。
実際に、認定看護師資格の教育を受ける人の8.3%が奨学金を利用しているというデータもあります。
利用できる奨学金制度は受講する教育機関によって異なるので、まずは自分が受講する教育期間の制度を確認しましょう。
また、奨学金の種類によっては、借りられる金額に上限があったり、2つ以上の奨学金制度を併用できたり、一定の条件を満たすと返還が免除されるなど、さまざまな措置があります。
事前に制度の内容を確認し、自分に合った奨学金制度を利用しましょう。
【認定看護師教育課程奨学金の例】
- 貸与額⇒120万円以内
- 応募資格⇒教育課程修了後、2年以上保健医療分野の現場に就業する意思があること、他の奨学金制度と併用していないこと、など
- 貸与期間⇒認定看護師教育課程の最短修業期間を限度とする
- 返還⇒認定看護師教育課程を修了した翌月から起算して3カ月後から一括または割賦により全額返還、返還期間は24カ月以内
(参考:日本看護協会「奨学金・助成金」)
【その他の奨学金制度の一覧】
(参考:e-ナースセンター「奨学金・助成金情報」)
認定看護師として評価してくれる病院の共通点
評価の方法も病院によって違います。
しかし、認定看護師の資格や仕事内容をよく理解し、評価に前向きな病院があります。
それらの病院には共通点があり、「医療を高めたい」という熱意が感じられます。
ここではその共通点を紹介します。
資格取得の支援制度がある、利用者がいる
病院の収益は大幅に増えることがなく、利益の大半は人件費だと言われています。
そのような中で資格取得を支援するということは、病院の利益が減ることになります。
それでも病院が支援するのは、スタッフや病院の医療をもっと良くしたいという病院側の考え方があるからです。
また、実際に支援制度を利用している人がいるかも大事なポイントです。
認定看護師として働く人がいる
認定看護師として現場で働く人がいるということは、認定看護師のニーズがあるということです。
ニーズがあるということは、認定看護師としての存在価値が認められていて、重要な仕事を任されやすくなり、評価されやすくなります。
また、認定看護師と一緒に働くことで他のスタッフの意識や理解も高まり、協力的な関係を築くことができます。
教育に熱心である
認定看護師に限らず、新人の育成や院内のスタッフの指導に熱心に取り組んでいる病院は、教育体制が整っているため評価に対しても前向きです。
また試験のために勤務調整をしてくれたり、勉強会を開いてくれたりと、スタッフの育成をあらゆる面からサポートしてくれることもあります。
評価の工夫がされている
スタッフのモチベーションを上げる評価は、公正で透明性がなくてはなりません。
評価の方法としては、クリニカルラダーや人事考課、成績評価などがありますが、病院がさまざまな評価方法を利用し、さらに評価の基準や結果をスタッフに公開していることが大事です。
評価の工夫をしている病院は、評価結果を待遇に反映させることができます。
認定看護師に理解のある病院の探し方
これは、今から病院を探す人に該当する内容です。
今は、ほとんどの病院がHPを持っており、病院の制度や様子がわかりやすくなりました。
HPでチェックするべき項目としては、病院の理念、看護部の紹介・実績、研修制度、病院全体の制度などがあります。
- その中でも、認定看護師の支援制度や、認定看護師として働く人の声の記載があるHPを持つ病院は、認定看護師に対する理解が高いと言えます。
- またHP以外にも、インターンシップや転職サイトを利用したり、先輩看護師に話を聞くなどの方法があります。
転職サイトにはキャリアコンサルタントがおり、病院の内部情報(資格支援サポートの状態や、実際の取得者の状況等を)を教えてくれます。
参考までに下記は主な転職サイトの資格取得支援のある病院の求人数ランキングになります。(2025年1月時点)
順位 | 転職サイト名 | 求人数 |
---|---|---|
1位 | 看護のお仕事 | 38,114件 |
2位 | 医療ワーカー | 1,075件 |
認定看護師の支援に積極的な病院の紹介
認定看護師の支援に力を入れている病院を2つ紹介します。
【新東京病院】
- 在籍する認定看護師は2名(感染管理認定看護師、集中ケア認定看護師、各1名)
- 認定看護師教育機関に在学しているのは2名
- 教育機関の学費の援助がある
- 子育てをしながらでも認定看護師として働いている
- 高水準なチーム医療の確率と、1人の看護師としてのスキルアップを目指している
(参考:新東京病院 看護部)
【大阪脳神経外科病院】
- 在籍する認定看護師は2名(脳卒中リハビリテーション認定看護師2名)
- 教育課程を受講する際に必要な資金の援助がある
- 教育期間中は出張扱いとなり、通常通りの給与が支給される
- 患者さんへの質の高い看護を提供するため、認定看護師支援に力を入れている
(参考:大阪脳神経外科病院 看護部紹介)
認定看護師として働く人の声
実際に認定看護師として働く方が、どのような目標ややりがいを持っているかを知ることで、あなたが認定看護師としてどのように働きたいかが見えてきます。
認定看護師は21の分野がありますが、その一部を紹介します。
救急看護
- 救命救急は時間との勝負、患者さんと接する時間は短い。でも短時間で力が発揮できれば状態は回復し、そこに救急看護としてのやりがいや喜びを感じている。
- 病棟の看護師が、自分で救命処置ができるように指導している。
- 救命第一の現場であっても、患者さんやその家族に寄り添える看護師を育てることが目標。
※参照元:[pagelink slug=”certifiednurse-type-105″]
がん化学療法看護
- 薬剤の副作用など、環境の変化に臨機応変に対応できるよう、患者さんのための勉強は怠らない。また、薬剤に伴う患者さんへのケアも大事にしている。
- 「セルフケア支援」こそ、自分のやりたかった看護であり、この分野を極めることを決心する。
- 緩和ケアチームとの連携を深め、ホスピスの設立を目指す。
※参照元:[pagelink slug=”certifiednurse-type-105″]
認定看護師として働くということ
これから認定看護師を目指す人にとっては、給与に関する厳しい現実が見えたのではないでしょうか。
しかし、その中でも認定看護師として生き生きと働いている人たちがいることも確かです。
認定看護師になろうと考えているのであれば、まずはあなたが認定看護師になりたいと思う理由や目的、やりがいを考えることが大切です。
認定看護師として、あなたらしい働き方を探してみませんか?
看護師全体の給与に関する内容はこちらの記事をご覧ください。
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