プリセプターになると様々な悩みにぶつかります。
新人ナースがなかなか仕事を覚えてくれない、やる気が感じられない、自分よりも年上で関わりづらい、同僚が協力してくれない(そのくせ文句ばかりいう)…つらい気持ちを誰にもいえず、苦しくなることはありませんか?
この記事では、忙しい中で指導をがんばるあなたに、つらい気持ちへの向き合い方、悩みの解決に向けたヒントをお伝えします。
あなたの気持ちが少しでも軽くなって、「また明日からがんばろう!」と思っていただけたら幸いです。
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うまくいかない・もう辞めたい…と思ったら
新人ナースとの関係がうまくいかない、失敗や覚えの悪さを指摘される…。
そんな状況がつづくと、「私はプリセプターに向いてない…」「ぜんぶ私が悪いの?」と思ってしまいます。
自分なりに精一杯頑張っているのに、結果がついてこない、努力を認めてもらえないのはとてもつらいことです。
でも、あまり落ち込まないでください。
今あなたが悩んでいるのは、あなたに責任感があって「プリセプターを何とかやり遂げたい!」と頑張っているからです。
まずは自分の頑張りを素直に認めてあげましょう。
今すぐ気持ちがラクになる3ステップ
ステップ1:〈悩む〉と〈考える〉の2つの違いを知る
悩みを解消してスッキリするためには〈悩む〉のではなく、〈考える〉ことが大切です。
なお、この2つの違いは次のとおりです。
悩む | つらい・苦しい気持ちが堂々巡りしている。 ずっとモヤモヤした気持ちが続いて、一向によくなっている気がしない。 |
考える | つらい・苦しい気持ちになっている原因を紐解いて、「次に何をすればいいのか?」が分かってきている。少しずつ良くなっている実感がある。 |
あなたは今どちらの状態ですか。
〈悩む〉の方にいると気付いた方は、今すぐ悩むことはやめましょう。
「でも、〈考える〉ってどうすればいいの?」という方のために、次に〈考える〉ための方法をご紹介します。
ステップ2:〈考える〉にはA4用紙にメモを書くだけ
「書くだけで解決するの?」と意外に思うかもしれません。
なぜ書くことが大切かというと、悩みはもやもやしてハッキリしない気持ちだからです。
書いて目に見える形にすることで、「あっ!自分はこれが原因で悩んでいたのか」「こうすればいいかもしれない!」と気付くことができます。
準備する3つのモノ
- A4用紙(なければメモ帳などでも大丈夫です)
- ペン
- タイマー(スマホでも大丈夫です)
※慣れてきたらタイマーはいりません。
書き方の3つのルール
- タイマーを1分にセットします。スタートしたら②と③を時間内に書きましょう。
- 左上にタイトル(下線を引く)を書きます。
- 箇条書きで4~6行、各20~30文字を目安に書きます。
書くときの2つの注意点
- 頭に浮かんだことをササっと書く。まとめる/言葉を選ぶ必要はありません
- とにかく具体的に書く。誰も見ないので名指しも大丈夫です
友人にグチを言い過ぎるとうんざりされますが、紙なら何もいわないので、日頃のうっぷんを晴らすつもりでどんどん書きましょう。
「まだモヤモヤする!」と感じたときの2つの対処法
- 木村さんはどういう人を頼りたいと思うのか?
- 木村さんがいつも質問・相談している青木先輩と私の違いは何か?
- どうしたら木村さんは私を頼ってくれるか?
- 私は木村さんにどんな行動をとってもらいたいのか?
- なぜ木村さんは年上の私を話しかけづらいと思うのか?
- 木村さんが質問しにきたとき、どんなふうに接したら安心するのか?
- 木村さんと雑談するとしたら、どんな話題があるのか?
- 木村さんのペースに合わせて教えるために、私はどんな準備をすればいいのか?
ステップ3:一番の親友にどうアドバイスするか想像する
書いて気持ちが落ち着いたら、書き出したものを眺めて「あなたの一番の親友がこの状況について相談してきたら、どんなアドバイスをするだろう?」と考えます。
本当に大切な友だちの相談なら、嘘を交えず、本音のアドバイスができますよね。
たとえば、「質問しに来てくれたときにおどおどしている」という状況があるなら、“猫背で声が小さいと、いかにも自信がなさそうに見えるから、背筋を伸ばして元気な声で対応してみよう!”という具合です。
【書いて気持ちをスッキリさせる方法を詳しく知りたい方にオススメの本】
【参考:世界一シンプルなこころの整理法】
仕事にかぎらずプライベートの悩みにも使えます。
実際にどのように使えばいいのか、例もたくさん載っているので、読んですぐに実践しやすいのも魅力です。
- モヤモヤを感じたら、今、自分は〈悩む〉と〈考える〉のどちらなのか知る
- 悩んでいることに気付いたら、うっぷんを晴らすつもりでA4用紙にメモを書く
- ひと通り書き終えたら、親友に同じ相談をされたらどうアドバイスをするか?を考える
《新人ナース・プリセプティ編》よくある5つの悩み
この章ではプリセプターの方々によくある悩みについて考えていきます。
実際にとるべき行動は、職場の環境や相手によって違うので、ここで紹介できるのはあくまでもヒントですが、(2)でお伝えした方法を実践するときに役立ちます。
かかわりづらい…私よりも「年上」の新人ナース
新人ナースが私よりも年上で、プライドがあるのかプリセプターの私には何も話してくれません。プリセプターとプリセプティの関係が成り立っていないように感じて、とても不安です。
新人ナースが頼ってくれないと、「私はプリセプターの役割を果たせていない…」と感じて不安になりますよね。ですが、新人ナースの方が年上なので、プリセプターも感じていることを伝えづらいという状況でしょうか。
- あなたに質問・相談がないことで、新人ナースに何か問題は起きていますか?
問題が起きている場合は、プリセプターとして何かしらの形で介入しないといけません。でも、何も問題がない場合は、あくまでプリセプターの役割は「支援」なので、新人ナースにとって一番ストレスがかからない方法で学んでもらうのも選択肢のひとつです。
- 新人ナースが相談・質問しづらいのはどうしてですか?
新人ナースのほうが年上ということで、年下に相談・質問するのに抵抗があるのかもしれません。でも、年の上下にかかわらず、やはり質問・相談しやすいのは「話しかけやすい人」ではないでしょうか。明るい挨拶やふだんの何気ない会話の積み重ねが大切です。
またっ!? 新人ナースが何度も同じミスをする
新人ナースが似たようなミスを何度もくり返して、一向にミスが減る気配がありません…。最近では、ミスを起こさないかいつも注意して見ることに疲れてしまい、新人ナースの学習能力のなさにあきれています。
どうすれば同じミスをくり返さない状態をつくれるの?ということでしょうか。
- 新人ナースは学習しているか?
新人ナースは、「経験する→反省する」をくり返して仕事を覚えます。ここでいう「経験」とは、新人ナース自身が経験した成功や失敗をいいます。プリセプターがミスを恐れてあれこれ手を出すと、「痛い目」にあう経験が少なくなるので注意しましょう。
新人ナースが失敗や成功を経験したら、次は反省しないといけません。ここで注意したいのは、プリセプターが答えを教えてはいけないということです。新人ナース自身になぜうまくいったのか/うまくいかなかったのかを考えてもらいましょう。
- それでも解決しないときは…問題の根本を見る
反省をきちんとしても失敗するときは、「なぜ失敗するのか?」を深く考えてみましょう。例えば、経口薬の準備をお願いしたら、新人ナースが似たような名前の別の薬を用意していたとします。
用意する薬を間違えたことに目がいきがちですが、よく行動を観察すると、処方せんをよく読んでいない、早くやらなきゃと焦って確認していないなどの原因が見つかります。とくに同じミスをくり返すという場合は、仕事で必要な工程のどこかが抜けている場合が多いのです。
ヤル気あるの? 何をいっても反応がない新人ナース
やる気の見えない新人ナースにイライラしてしまいます。どう関わったらいいのかわかりません。
- どんな行動がやる気のないように見えるのか?
新人ナースに注意するとき「やる気が見えない」とだけ言われても何を直せばいいのかわかりません。なので、まずは新人ナースの言動について気になっているところを整理しましょう。
例)・話を聞くときにメモをとらない
・話をしても反応がない
・勉強してこない
・質問しに来ない
- 本当にやる気がないのか/単になさそうに見えるだけか?
まずは、本当にやる気がないのか/単になさそう見えるだけなのかを新人ナースに確認しましょう。「見えるだけ」ならば、そのような態度をとってしまう理由をよく聴いて、どのように直していくか一緒に考えましょう。
逆に、本当にやる気がない人にアプローチするのはものすごく疲れます。なので、やるもやらないも最終的には新人ナースが決めることだと割り切って、必要なときは支援する用意があることだけ伝えて遠くから見守るくらいでいいのかもしれません。
「私はダメな子…」すっかり落ち込んだ新人ナースへの接し方
新人ナースが「自分はできない、ダメだ」と言って、すごくストレスを感じているように見えます。具体的な反省とか対策を考える余裕もなさそうで、どのように関わったらいいのかわからず悩んでいます…。
- 良いアドバイスをしようと思わないこと
ストレスを感じている相手の話を聴くとき、「解決してあげよう」「正しい方に誘導しよう」と思う必要はありません。自分が話していることを丁寧に聴いて、共感してくれただけで、だいぶ気持ちは楽になります。
このとき話の内容だけではなく、話すときの仕草や表情、声のトーンにも注意を向けてください。自分の気持ちを伝えることに慣れていない人が多いからです。そして、感じたこと・思ったことを素直に伝えましょう。
- できなくて当然と伝えるときの注意点
新人ナースはできないことの方が多いです。なので、「今はできなくても当然」だと伝えることで相手の気持ちが楽になることがあります。ただ、一歩間違えると「あなたには期待していない」と聞こえてしまうときがあるので注意しましょう。
プリセプターは先生? 新人ナースの質問にうまく答えられない
新人ナースの質問に対して曖昧なことを教えてはいけないと思い、率直に「私もわからない」と答えました。すると、新人ナースはらちがあかないと思ったのか、先輩ナースに質問するようになってしまいました…。
新人ナースの質問にうまく答えられないと、期待を裏切ったようでとても心苦しいですよね。
- プリセプターならすべての質問に答えられるのが当たり前?
プリセプターは看護師になって3・4年目の若い人が多いので、すべての質問に答えることができないのは当然です。でも、せっかく質問したのに放置されると、新人ナースもストレスが溜まります。
- 答えを教える以外のサポートはないのか?
自分で答えられないなら、あなたがいつも疑問を解消するときに使っている方法を教えてあげましょう。おすすめの本、その分野に詳しい先輩(と質問していい/NGなタイミング)など答えではありませんが、どれもこれも新人ナースにとっては貴重な情報です。
《同僚・上司編》よくある2つの悩み
少しは協力してよ! 何もしてくれない同僚たち
プリセプティが周りのスタッフに質問したとき、プリセプターに聞いて! と言われたそうです。その他にも、非協力的な言動がみうけられます。協力してもらうには、どうすれいいでしょうか。
周りのスタッフが協力してくれないと、ぜんぶ自分1人で教えないといけない、誰も苦労をわかってくれないと感じて、よりいっそう心の負担が大きくなりますよね。
- プリセプティには何ができるか?
いくら周りのスタッフが忙しそうにしていても、困ったときには聞かないといけません。聞かないで大きなアクシデントを起こすほうがよほど危険です。なので、「私からも他のスタッフに言っておくから、わからないことがあたったらちゃんと聞いてね」と伝えましょう。
- 他のスタッフには何ができるか?
他のスタッフの中には「プリセプターがいるのに勝手に教えていいのだろうか?」と迷う人もいます。なので、協力してもいいのか/したくないのか、まずは確認しましょう。
そして、協力してくれそうなスタッフには、あらかじめプリセプティの特徴(仕事は丁寧だけど少し遅い)など伝えておくと、実際にサポートするときに、ギャップが少なくて済むのでスムーズにサポートできます。
プリセプターには興味なし!?新人にばかり優しい師長
師長は新人ナースにばかり褒めたり優しくしたりして、自分たちプリセプターには優しく新人ナースに接するようになど求めるわりには、ねぎらいの言葉くれるなど支援してくれる様子がありません。
つらくて苦しいときに、師長に頼りたいのに、苦労を認めてもらいたいのに、私には関心を持ってくれないの…? と感じて、ますますつらいお気持ちなのだろうと思います。
- まずは伝える
自分が今どんな状況・気持ちなのかをきちんと伝えることが大切です。特に新人教育に苦労している職場だと、師長も新人ナースに目がいきがちになります。なので、仕事のどの場面でもいえることですが、「言わなくてもわかっているだろうけど、あえて伝えよう」とする姿勢が必要です。
- どんなサポートがほしいのか具体的に伝える
ただし、気持ちを伝えるときには、どんなサポートがほしいのか(手伝ってもらいたいのか・努力を認めてもらいたいのか)を具体的に伝える必要があります。感情的なことばかり言うと、いくら一生懸命伝えても、グチとして捉えられてしまう恐れがあるからです。
おわりに
この記事で紹介した3ステップは、紙・ペン・スマホさえあればどこでもできる簡単な方法です。
最初は、なかなか自分の気持ちを言葉にできないかもしれませんが、何度か続けるとスラスラ書けるようになります。
そして、やるべきことがハッキリするので、「よしっ!明日はこれに挑戦してみよう」というふうに今までよりもずっと自信をもって仕事に取り組めるようになります。
「つらいなぁ…」「苦しいなぁ…」と感じたとき、だまされたつもりでまずは1枚書いてみましょう。